第165話 迷宮攻略 ②
広く複雑な遺跡の中を 歩き続けるも、依然として進んでいる感覚をつかむことはできずにいた。
自分たちが今どれほど歩いたのか、また時間の経過すら曖昧になってきている。
それでも三人は歩みを止めない。
その先に、次へつながる手掛かりがあるとわかっているのだ。
諦めるという言葉は、三人の脳裏には存在していなかった。
「……相変わらず出てくる魔獣は雑魚ばかりだな」
「俺としてはありがたいが……なっ」
アイトは大型犬ほどの体格を持つカエルの魔獣を切り捨てながら言う。
周囲に飛び散る紫色の液体が、その魔獣が普通ではないことを物語っている。
「やっぱり、こいつも毒持ちか」
「この遺跡にいる魔獣全て、毒を持っていると思った方が良いですね。『毒女帝の遺跡』と言うだけあって、魔獣の持つ毒はかなり強力なようです」
「それなら、魔獣が弱くても問題はないのかもしれないな。強力な毒を持っているならなおさらな」
この遺跡で出現する魔獣は、倒されるたび、周囲に強力な毒を撒き散らす。
これまで酸のような溶解液や麻痺、幻覚作用のある毒霧を発する魔獣も居た。
そのどれもが、即死とまではいかないが、人体にかなりの影響を及ぼすものであることがわかっていた。
それを理解してから三人は、魔獣を討伐する際、ある程度の距離を取って倒すようにしている。
「毒と言えば……レンさん、以前襲い掛かってきた方も毒を持っていましたよね?」
「ああ。あの男か女か分からんやつな。確か……ヴィランとか言ったか」
「――――……キヒッ」
煉が名前を言うと、どこからか独特な笑い声が聞こえてきた。
声の主を探して、三人は周囲を見渡してみる。
その場には、煉、イバラ、アイトの他に人影は見当たらない。
気のせいかと思い、話を続ける。
「あの方の毒とどちらが厄介ですか?」
「正直、毒を受けたわけじゃないからなぁ……。しかし、俺の炎で燃やしてもどんどん溢れてくるのはかなり面倒だったな。いくら大罪魔法だからって、もう少し限度ってもんがあるよな」
「……それ、お前が言うことじゃないな」
アイトが煉へとジト目を向ける。
燃やしても燃やしても次から次へと溢れ出る毒。
それだけでも脅威と言えるのだが、それは煉にも同じことがいえた。
ほぼ無尽蔵の魔力を持ち、魔力の続く限りいくらでも炎を出すことができる。
その上、火力は怒りのボルテージ次第で上限知らず。
神を滅する力と言われるだけあって、他の魔法とは比べ物にならないほどの強力な魔法である。
そんな力を持っている者は、世界に七人しか存在しない。
「いやいや、七人もいるんだぞ。その七人が揃ったらと思うと……やばいな。世界は終わりだ」
「そんな非常識な奴らばかりじゃないだろ……たぶん」
煉はこれまで出会った大罪魔法士を思い浮かべた。
既に煉は自分を含め、六人もの大罪魔法士と遭遇している。
その誰もが、一癖も二癖もある人物だったのは記憶に新しい。
そんな人たちが一堂に会してしまったらと想像する。
「……ダメだ。これは考えちゃいけないやつだ。初めましてでいきなり襲いかかってくる奴もいるし。かなり危険だ!」
「そうだろ! お前もそのうちの一人だからな!」
「未だ出会っていない『色欲』がまともであってほしいですね……」
「――――……キヒッ」
やはり声が聞こえる。
この独特の笑い声を、煉は忘れるはずもなかった。
今一番会いたくないと思っていた。
「さすがにこれ以上は誤魔化せないだろ。とっとと出てこい!」
「――――キヒヒッ」
独特の笑い声をあげ、煉たちの前に姿を現したのは、中性的な見た目の黒髪少女?である――ヴィランだ。
何処から現れたかと言うと……。
「「「なんで毒の中から出てくるんだよ!?」」」
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