第92話 タンサ君
「んで? 超遠距離探知機、だっけ?」
しつこく絡んでくるアイトが余計に面倒に感じ、煉は話を聞くことにした。
アイトは表情を明るくし、魔道具の説明を始めた。
「その通り! 旅商人として世界中を巡ったことでようやく完成したんだ。これがあればどんなに遠くにあるものだって見つけることができる!」
「どんなに遠くってどれくらいだよ」
「さすがに限界はあるから……最高でもこっから大図書館までなら?」
「大図書館までって………………それは言いすぎだろ。どんだけ距離あると思ってんだよ」
「ほ、本当だって! 試しに大図書館にしかない本を探知してみたんだよ。そしたらちゃんと反応を示したんだ。ほら、見ろって」
そう言って煉に魔道具を渡した。
煉にとっては馴染みのある形をした魔道具。
スマートフォンを模した形で、液晶のような画面に文字が浮かび上がってきた。
というよりも、アイトが煉のスマートフォンを見たことで完成した魔道具と言える代物だった。
「確かに形にはなっていると思う。しかし、原理はどうなってんだ?」
「それはな――――特定の魔力を探知しているんだ」
アイトは魔道具をいじりながら、煉の疑問に答えた。
「この世界では、万物に魔力が宿るとされている。それが神の教えだ。有機物無機物関係なしに全てのモノに魔力がある。そしてそれは一つとして同じものはないとされる。それが正しいのなら、その魔力を判別する機構を作り、情報としてこれに刻み込む。そうすることで、特定した魔力の位置を割り出せるじゃねぇかって思ったのよ。
んで、煉に見せてもらった『すまぁとふぉん』の機能を元に情報の精査仕分け特定をできるように魔法陣をくみ上げたってわけ。それで探知は完璧だ。
あとは感知魔法の応用に、イバラっちの感応魔法による増幅で精度を高めたのさ。するとご覧の通り、この超遠距離探知機の出来上がりってわけよ!」
アイトの説明を聞いて、煉は納得と同時に驚愕もしていた。
魔法がイメージ次第と言っても、簡単なことではない。
「……すげぇな、これ………………」
「だろ! だろだろ! 超遠距離探知機、名付けて『タンサ君』だ!」
「………………ネーミングセンスは絶望的だな」
「そんなバカな!?」
煉はタンサ君を使って試しにイバラの位置を割り出してみた。
すると画面にヘーラの街の地図が表示され、イバラを示す赤い点が動いていた。
「おお。街中歩き回るって言ってたからたぶん合ってるよな。なあ、これって登録した魔力じゃないと表示はできないのか?」
「正確さに欠けるが、精査する機能も付けたからな。その魔力が何を示すのか大雑把だがわかると思うぞ。魔力の強弱とか、魔法を使用したとか、魔力痕とか、属性とか」
「じゃあ、マリアもこれで見つけられるんじゃねぇか?」
「ああ、確かに………。試しにやってみるか」
煉は自分の大罪魔法の魔力を登録し、同等の魔力量、質、そしてマリアの持つ神聖属性など様々な条件でタンサ君を起動した。
「ん? なんだこれ……」
「うわっ。どうなってんだよ。いきなり壊れたかぁ?」
画面に表示されたのは教国全体。
ところどころに光る赤点。ひと際強く輝く点がいくつかあり、一つだけ煉と同様の魔力を計測した点があった。
おそらくそれがマリアであると煉たちは考えたが、それ以上に気になることが一つ。
「この国、大丈夫か?」
「ちょっとやばいんじゃないかこれ」
教国をドーム状に覆うように反応を示した赤い魔力。
そして教国の地下に光る赤点……一つずつ強く光っては消えていく。
地下の点が一つ消えるごとにドーム状の魔力が濃さを増す。
まるで、地下にいる何かを消費しているかのように………………。
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