第69話 冒険者として
「あんたが頭を下げる必要あるのか?」
煉は不思議そうにそう口にした。
顔を上げたガレックは少しキョトンとした顔で煉を見る。
「俺たちは冒険者だ。魔獣が出れば討伐する。それが依頼ならなおさらだ。そしてあんたはギルドマスターだろ。お願いじゃなくて、命令でも何でもすればいい。それくらいの権限はあるだろ」
「そ、そうだが……しかし、これは今まで通りの簡単なものではない。Aランク冒険者でさえ、命がいくらあっても足りないレベルの事態になるっ」
「普通なら、な?」
そう付け加えて煉は不敵に笑う。
その表情をみて、イバラがいつものだとため息交じりに笑った。
そんな二人の様子にガレックは呆気にとられた。
「数十体の地竜か。腕が鳴るな」
「レンさん。素材まで焼き尽くさないでくださいね。せっかくお金があちらから来てくださるのですから」
「わぁってるよ。気を付けるって」
「そう言ってこの間もブルの素材が灰になったの忘れてませんからね」
「あー……」
煉は気まずそうに目を逸らした。
ガレックが我慢の限界を迎え声を荒げた。
「き、君たちはっ、怖いとは思わないのかねっ!?」
「ん? 別に」
「レンさんならどうにかしてくれそうですからね。怖いとは思いませんね」
「は、ははっ……君たちの力量をしっかりと測れていなかったということだね」
そう言って乾いた笑いを浮かべ天を仰いだ。
「とりあえず、情報だけは正確に教えてくれ」
「もちろんだとも。君たちを主軸に我々の行動指針も考えたいからね」
そうしてしばらく煉たちは今後の策を話し合った。
◇◇◇
「……本当に大丈夫ですか? 無理してたりとか」
「無理なんかしてねぇよ。地竜くらいならいくらでも相手できる」
「でも……また、あの時みたいに……」
「それは……わからねぇ。そうならないようにするだけだ。それに、気になることもあるしな」
そう言って煉は険しい顔をした。
今回の事態に思うことがあるみたいだ。
「大氾濫については以前調べました。数十年に一度あるかないかの事例だそうですが、本来ならもっと魔獣の生息地に近い場所で起こる筈です」
「そうだ。地竜ならもっと山奥にいるはずなのに、こんな平地の小さな森の近くになんているはずがない。なら――こんなことを起こしたやつがいる」
「もしかして……天使、だと思ってます?」
「一節じゃ大氾濫は『神の試練』だとも言われている。それなら天使の仕業って言うのも考えられる。最近の噂もあるしな。可能性の一つとして考えてるだけだが」
未だ見つけられずにいる天使を想像し、煉は右手に炎を宿した。
「天使だかなんだか知らないが、もし俺の邪魔をするというのなら……燃やすだけだ」
そうつぶやいた煉は拳を握った。
煉の意志に同調するかのように、炎は波動となり夕暮れの空に広がった。
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