第67話 天使の計画

「はあ!? ずりぃぞ、ミカエルばっかり! 魔人なんて最高の獲物じぇねぇか! 羨ましいぃ」


 ウリエルはずるいずるいと駄々をこねる。

 ラファエルは深いため息を吐き、額に手を当てた。

 そんな中、ミカエルは無感情のままに淡々と告げた。


「私にとって人間も魔人の大差ありません。どちらにせよ、標的を消すことに変わりないのです。そのような些事、言葉にするのも無意味です」

「なんだよ、つまんねぇ奴だな。いくら主命だからって楽しまなきゃ損だぜ。滅多にいない魔人相手にするんだ。少しくらい遊んだっていいってもんよ」

「結構です。時間の無駄でしかありませんから。……それでは、私はこれで失礼します」

「あら、お待ちになって。わたくしたちは何をすればよろしいのでしょうか?」

「方法はあなた方にお任せします。主命の邪魔さえ入らなければいいので」

「そうですか。わかりましたわ。あなたはあなたの使命を全うなさって。お言葉通り、わたくしたちは好きにやらせていただきますわ」

「ええ。それでは」


 そうしてミカエルはどこかへと飛び去って行った。

 残った二柱は楽しそうに口元を歪めていた。


「好きにやっていいってよ。少しくらい暴れても怒られやしないよなぁ?」

「いけませんわ、姉様。此度のメインはミカエルです。わたくしたちがあまり目立つのはよくないかと」

「ちぇっ。仕方ねぇか。それで、あたしたちは何をするんだ?」

「……神は時に試練をお与えになられます」

「急になんだよ」

「神の試練ということで、災厄を呼び起こそうかと思いますわ。簡単に言えば、です」

「おっ、いいねぇ。何年ぶりだっけ?」

「以前の記録では数十年前に一度偶発したみたいですわ。今回は意図的に起こしてみせましょう」

「つっても、あたしが何かするわけじゃねぇから、あんまアガんねぇな」

「あら、姉様にもやっていただくことはありますのよ」

「何させるつもりだ? 細かいことは苦手だぞ」

「わかっていますわ。姉様には魔獣を集めていただきたいのです。そうですわね……準特級くらいがいればよろしいかと」

「準特級って言うと……下級竜あたりか。どれくらい集めるんだ?」

「十もいれば。あとは姉様のやる気と彼らの繁殖力次第ですわ」

「よっしゃ! あたしに任せときな!」

「作戦の決行は一週間後と言っていましたわ。それまでにお願いいたします。私は他にやることがあるので」


 そして二人の天使は別行動を始めた。

 一週間後の彼女らの元には大量の魔獣が集っていた。





 ◇◇◇




「……なあ、イバラ。最近魔獣の出現報告多くないか?」

「そうですね。日に日に増えているみたいですよ。何か起こったりして」

「あんまりフラグ立てんなよな。ただでさえ変な噂を探ってんだから、これ以上はさすがに面倒だ」


 煉とイバラはミミール周辺で魔獣退治をしていた。

 この時の彼らはまだ知らない。

 数日後に、一国を亡ぼすほどの大氾濫が起こることを――――。





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