第61話 介入
元クラスメイトの勇者たちは警戒を強め、煉に切っ先を向けた。
突然黒いローブを纏った怪しい男が現れたら警戒するのも当然だった。
そのことを理解しているからか、煉は気にせずイバラに目を向けた。
「お前、俺に目立つなって言って自分で目立つなよな」
「……私のせいじゃ、ないし」
「拗ねんなよ、ったく……」
そう言って煉は今度こそ勇者たちの方を向いた。
「悪いんだが、俺の相方なんだ。それ、納めてくれないか?」
「……あなたも魔族の仲間、なの?」
「先に言っておくが、鬼族と魔族は別物だぞ。鬼族は獣人やエルフと同じ亜人だ。今は存在自体が少ないからメジャーじゃないだけ。知らないのも無理ないが、魔族だと決めつけてるのはやめてくれ」
「……その言葉を信じろとでも」
「信じる信じない以前に自分の無知を恥じろ。お前たちの知らないことなんか世界中にたんまりあるぞ。いちいち先入観で決めつけんな」
呆れた様子で煉はそう言った。
周囲の野次馬たちは煉の言葉に思うことがあるのか、申し訳なさそうに顔を伏せた。
『知識の国』に済むものとして先入観でも決めつけは恥ずべきことだと思っているのだ。
「だ、黙れ! 突然出てきて怪しい奴め! おい、お前ら! 早くそいつを何とかしろ!」
「あと、こんなところで暴れるとか馬鹿のすることだろ。本は大切に、な。そうは思わないか?」
「魔族が何を言っている! おい、早くしろ!」
そう言われ、戸惑いながらも勇者たちは武器を下ろすことはなかった。
とにかく面倒に思った煉は、フードを取り顔を晒した。
深紅の髪が露わになり、その顔を見た人たちは驚愕の表情を浮かべた。
「えっ……」
「その顔……嘘、だろ」
その中でも勇者たちはまるで幽霊でも見たかのような顔をした。
周囲からは驚きの声と共に、煉の異名が飛び交っていた。
「……あの深紅の髪と顔の紋様、まさか」
「こんなところに来ているとは」
「本当に『炎魔』が……噂通りだ」
煉はここでも注目を集めていた。
「先に言っておくけどな、俺は人間……………………はやめてんだった。だから、まあ、人間とは言えないけど、魔族ではないから」
「な、何を言っているんだ、貴様は! わけの分からないことをっ」
「めんどくせぇ、こいつ………」
「声に出てますよ、レンさん。本音は抑えてください」
「き、貴様らぁ……」
ふと煉はいつまでも硬直している人たちが気になった。
武器を下ろすこともなく、ただ茫然と煉を見ている勇者たち。
「あ、阿玖仁、君………………?」
「う、嘘だろ……だってあいつは……」
「だったら、彼は誰よっ。同じ顔の別人だとでも言うの?」
「悪いが、正直お前らのことに興味はない。俺の目的も大体済んだし、今日はここらでお暇させてもらうから。イバラもいいよな?」
「構いません。私も必要なことは得られましたし、何かあればまた来ます」
「んじゃま、そういうことで」
「ま、待って――――」
煉は軽く手を振り、イバラと共に炎に包まれ、その場から忽然と消えた。
勇者たちは何とも言えない表情のまま、その場に立ち尽くしていた。
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