第30話 ギルド

 ――――冒険者ギルド。


 冒険者をまとめるための自治組織である。

 国の管理下に置かれず、魔獣討伐や護衛を基本として、その他雑用など依頼を冒険者たちに仲介する。

 そのため、全国各地に支部が存在する。


 とまあ、こんなこと説明するまでもないな。

 そう言う物語はド定番だからな。

 建物も全く想像通り……とはいかなかった。

 かなり大きくそれにとても綺麗な建物だった。

 粗野な冒険者たちが利用するというよりは、お役所のような感じだった。

 それだけは予想外だった。


「何ぼーっとしているのですか? そんな入口の前に立ち止まったら邪魔ですよ。早く入りましょうよ」

「ああ、すまん。ちょっと見入ってた」


 イバラが裾を引っ張って先へ促す。

 人混みが嫌なのか、俺の後ろから離れようとしない。


「歩きずらいから少し離れてくれ」

「お断りします。何かあったらどうするのですか」

「はぁ……わかったよ。行くぞ」


 イバラを連れ、ギルドの中に入る。

 そのとき。


「――――おっと」


 ちょうどギルドからできてきた冒険者とぶつかってしまった。

 前を見てなかったのは俺の方だ。

 無難に謝っておくに限る。


「すみませ――――」

「すまんな、坊主。ちょいと急いでるんだ。許してくれな」


 体が硬直した。

 動悸が激しい。冷汗が止まらない。

 あの目を見た瞬間、俺は恐怖を感じた。

 男は気にした様子もなく、そのまま立ち去って行った。


「――はっ!。はあっ………はあっ……………」

「ど、どうしたんですか? 顔色悪いですよ?」

「い、いや、何でもない……」


 対峙しただけで理解した。

 あの男には勝てないと。

 それにあの格好。とても見覚えがある。

 というか、馴染み深いものだった。

 濃紺の浴衣に群青色の羽織を肩にかけ、腰に刀を佩いた冒険者。

 左眼には深い切り傷があり、羽織の背に「鬼」の文字。

 明らかに日本語。しかも漢字というところであの男が何者なのか気になる。

 だが、今は一旦置いておこう。

 それよりもやることがあるからな。


「本当に大丈夫ですか?」

「ああ、気にするな。それより、登録ってあそこでいいのか?」

「そうです。初回登録者用のカウンターがあるのでそちらで」

「イバラも登録しておくか?」

「…………いえ、今はやめておきます。まだ何があるかわからないので。レンさんが本当に解決してくれたら、私も冒険者になります」

「そうか。なら、頑張るとしますかね」


 そうして俺たちは登録用のカウンターに向かった。


「ようこそ冒険者ギルドへ。登録ですか?」

「ああ」

「では、こちらの紙に必要事項を記入して下さい」


 渡された紙を読み、必要なことを記入していく。

 名前と年齢、出身くらいか。

 出身てどうしようか……。

 日本? いや、マルドゥク神王国にした方がいいのか?

 悩んだ末に後者にした。


「へぇ。かなり遠いところからいらっしゃったのですね。それでは、カードを作成するために、こちらの水晶に触れてください」


 そう言って受付のお姉さんは小さな水晶をカウンターに置いた。

 これはどこかで見たことあるような。

 想像通りだと少しまずいのでは?


「これは……?」

「これは能力値を計測するための水晶です。初回登録時の数値を記録し、カードに反映します。では、どうぞ!」

「これって、やらないとだめなやつ?」

「そうですね。やらないとダメっていうわけではないと思いますが……まず、やらない人はいないですね」


 ですよねぇ。

 まずいまずい。

 俺の能力値なんて計測できるのかよ。

 とういか、ジョブ「叛逆者」とか「憤怒」とかバレちゃまずいよな。

 どうしよう。誤魔化せるか?

 と、考えるが答えは出ないから諦めて水晶に触れた。


 NAME レン アグニ

 JOB ..,.;;@[;@;;.;,;@@@[;klxv

 SKILL ,.:l;l;@;:@:../.@p@

 MP ,l;;xzxvvbm;l.::;l


「「へ?」」

「うわっ」


 なんか文字化けした。

 いろいろとバレずに安堵した。

 良かったぁ……。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る