第23話 vs ゴルゴ―ン ③

 五枚目の炎壁が石化し、崩れたのに合わせゴルゴ―ンに向かって飛び出す。

 全身が悲鳴を上げているが今は後回しだ。

 全てをこの一刀に懸ける。


「〈蒼炎疾走フラム・アクセル〉!!」


 今の自分に出せる最高速で駆け抜ける。

 ゴルゴ―ンも何かを感じ取ったのか、これまで以上の力を出してきた。

 縦横無尽に繰り出されるビームが壁や天井に当たる。

 そしてラミアを生み出し、自身の壁とした。

 蛇の尾は正確に俺を狙って頭上から押しつぶそうとしている。


「アァ――――!!」


「邪魔をするなぁぁ!!」


 スピードを緩めることなく大きく蛇行を繰り返し尾を避ける。

 この際大半のラミアは無視する。進路上にいる奴だけ燃やせばいい。

 最速で最短距離を駆け抜ける。


「アァァァァァァァァァ!!!」


 ゴルゴ―ンは攻撃が当たらないことに苛立ち、さらに勢いを増した。

 ひび割れた天井がついに耐え切れず崩落を始めた。

 チャンス!!

 落ちてくる岩盤に飛び乗り、足場として空を駆ける。

 狙うはただあの首のみ!

 ゴルゴ―ンは視界をウロチョロする俺を見て不快な表情を浮かべた。

 そして両手を振り回し、俺を捕まえようとする。


「お前にとっちゃ俺は不快な羽虫かもしれないけど……俺からしたらお前なんかただの障害物だ! とっとと……失せろぉぉぉぉぉ!!」


『紅椿』を構え、ただ斬ることに集中する。

 道場の師範に叩き込まれたことを体は無意識に記憶していた。


『――明鏡止水。余計な雑念は捨てよ。一振りの刃と化せ。さすれば、我が流派に斬れぬものなし』


 そして呟いた。


「花宮心明流……」


「アァ――――!!」


 その時ゴルゴ―ンの目が紫の光を放つ。

 すると光に当てられた体が徐々に石化していく。

 石化した俺の体をゴルゴ―ンは手で振り払う。

 粉々に砕け散っていく体を見て、口元を歪める。

 これまでにない喜びの叫びをあげた。


「アァァァ――――!!!!」


 だが。


「――残念。それは〈炎分身アルターエゴ〉。俺はこっちだ」


 ゴルゴ―ンの背後からそう言う。

 まだ何かあると踏んでいた俺は、あらかじめ分身を作成して放っていた。

 分身に正面から突撃させ、俺は壁を伝い回り込んで背後を取った。

 そして分身と同じように落ちてくる岩盤を足場にゴルゴ―ンの首元まで飛んだ。


「アァァァ――――!!?」


「これで本当に終わりだ! 花宮心明流改〈紅炎・三日月〉!!」


 『紅椿』を真横に一閃。

 三日月型に炎の刃が飛び出し、巨大なゴルゴ―ンの首をたやすく切断した。

 首元の切断面は綺麗な直線を描き、大きな頭が地面に落ちていく。

 そして胴体は炎に包まれ、巨大な身体を燃やし尽くす。

 『紅椿』によって発生した炎は、ゴルゴ―ンの硬い鱗でさえも容赦なく燃やしていった。

 もしくはまだ俺がこの力を引き出せていないだけかもしれないが。


「何はともあれ、これで終わったなぁ……」


 振り返ると部屋の中は凄惨な光景だった。

 ゴルゴ―ンによって生み出されたラミアたちは悉く炎に呑まれ、天井や壁は亀裂が走り崩落していく。

 そんな中、気が付くとゴルゴ―ンの後ろにあった扉が開いていた。

 おそらくゴルゴ―ンを倒したことで開いたのだろう。連動していたらしい。

 このままでは崩落に巻き込まれ押しつぶされてしまう。

 最後の力を振り絞り、『紅椿』を杖代わりにして扉をくぐる。

 俺が通ったことで扉は自動的に閉まった。

 扉の先の様子を確認することなく入ったが、今はそんなこと言っていられなかった。

 扉が閉まったことで安心した俺は力尽き、そのまま倒れこみ意識を手放した。





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