第22話 vs ゴルゴ―ン ②

「――――〈炎の弾丸フレイム・バレット〉!」


 そう言って発射された弾は正確にラミアを撃ち抜いていく。

 これで三十体は倒した。

 だが、無限に増えるラミアをどうにかするためには、元凶をなんとかしなければ。


「アァ――――――――!!!」


「ちっ」


 撃ちだされるビームを回避し、思わず舌打ちが。

 さっきから同じことの繰り返しだ。

 ラミアで追い詰めてゴルゴ―ンは後方でビームを放って高みの見物。

 ……正直うざい。

 だんだん腹が立ってきた。

 どうしてあんな蛇相手に苦戦しなければならないのか。

 そんな自分にも腹が立ってくる。


「…………うぜぇ。まとめて燃やすか?」


 苛立ちのせいか思考が単調になる。

 しかし、案外悪くないかもしれない。

 とりあえず今目の前にいるラミアをまとめて一掃するのはありだ。

 というわけで。

 両手を合わせ集中する。

 自分の体から炎が溢れだし、津波のように襲い掛かるイメージ。


「〈獄炎波インフェルノ〉!」


 俺を中心に足元から全方位に炎が溢れだす。

 それは段々と重なり、大きな津波となってラミアを飲み込んでいく。

 そしてゴルゴ―ンの下半身――蛇の部分をも飲み込んだ。


「アァァァァァァァァァ!!」


 ラミアは骨すら残さず溶け、ゴルゴ―ンが悲鳴を上げる。

 蛇の鱗が少し溶けていた。

 それなりの有効打にはなったようだ。


「よしっ! このまま――」


「アァ――――!!」


「やば――……がは……っ」


 そのまま追い詰めようと駆け出した瞬間。

 横合いから蛇の尾が迫っていた。

 気づいた時には間に合わず回避することができなかった。

 咄嗟に両手でガードの構えを取ることができたのは幸いだったが、防ぎきれるはずもなく壁に打ち付けられた。


「はぁ……はぁ……ごほっ!」


 それは完全な直撃だった。

 魔人になったためか即死には至らなかったが、確実に骨はいってる。

 口に溜まった血を吐きだし、どうにか息を整える。

 しかし、そんな隙だらけの獲物を逃すはずもなく。


「アァ――――!!」


 激痛の走る体をなんとか動かし、ビームを回避。


「――ぐぅ!!」


 避けきることができず、右足にビームが掠る。

 当たった衝撃と石化の影響でさらに体は動かなくなってきた。


「まさに、絶対絶命ってか……〈深紅の炎壁クリムゾン・ウォール×5ファイブフォールド


 五重の壁を作り、守りを固める。

 そう長くはもたない。だから今のうちに覚悟を決めることにする。


「諦めたら即死。勝っても死ぬかもしれない。だが、死ねない理由がある……」


 そう呟いて自分の心に言い聞かす。


「だから、何とかして生き残るんだ。目の前に立ち塞がる不条理は全て燃やし尽くすと決めたんだ!」


 あの日の誓いを胸に、軋む体に鞭を打ち、歯を食いしばって立ち上がる。

 そして目を閉じ右手を前に伸ばす。

 そうしてイメージを固める。

 自分だけのを手に取るイメージ。

 すると頭にとある鍵言が思い浮かぶ。


「我が敵を払う罪深き宝具。顕現せよ『紅椿』」


 渦巻く火柱が立ち上り、それはやがてある形に変化していく。

 全てが炎によって形を成した、一本の大太刀。

 色鮮やかな紅い刀身に目を奪われる。

 なぜこんなものを作ることができたのか知らないが、好都合だ。

 右手で柄を取る。すると初めて持ったとは思えないほどてに馴染む感覚。

 不思議と、これならいける。そう思った。


「俺の体がもたないからな。これで終わりにしてやる。――――さぁ、行くぞ!」






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