第14話 変化

「うわっ。なんだこりゃ」


 水面に映る自分の姿を見て、煉は思わず声が出てしまった。

 日本人にとって馴染み深い黒髪が、深紅に染まっていた。

 サタンと同じようで、しかし煉の方が少し黒寄りの色だった。


「これも契約の影響か? それにしても身体的な変化が多いな」


 と言いつつ、水面を鏡のようにして少しポーズを取ってみる。


「…………意外と、似合ってるんじゃ……。って何やってんだ、俺」


 自分のした行動に呆れている煉。

 そして自嘲するように笑う。


「とにかく、自分の力ぐらいは把握しておかなきゃな。〈ステータス〉」


 煉は自分のステータスを確認しようとする。

 しかし、何も起こらなかった。

 煉は不思議そうに首を傾げもう一度呟く。


「〈ステータス〉」


 しかし、またしても何も起こらなかった。

 そして煉はおもむろに懐から小さなカードを取り出した。


 ステータスカード。

 主に冒険者や騎士が利用する自分の能力を確認するためのカード。

 煉のように宮殿やギルドで水晶玉に触れることで作成できるもの。

 能力の変化などを確認する場合はもう一度水晶に触れなければならないことが欠点。

 そのため、美香はより便利にできるように「ステータス」という魔法を作った。


 煉は美香に教えてもらっていたため、あまりステータスカードを利用することはなかった。

 しかし、今はなぜかそれが使えない。仕方ないので一応持っていたカードで確認することにした。

 本来であれば水晶に触れて変化を確認するのだが、これも美香が改良し「リロード」と言うことで、ステータスの更新を可能にした。

 余談だが、その際煉は「アップデート」ではなく「リロード」ということに疑問を感じ、直接美香に聞いた。

 美香の答えはそっちの方がカッコいいからという理由だったことに煉はため息をこぼした。


「なんで〈ステータス〉が使えないかは知らないが、今は気にしている余裕はないからな。〈リロード〉」


 煉がそう言うと、ステータスカードの文字が浮かび上がり変化していく。

 そして新たにカードに文字が刻まれていく。


「どれどれ……」


 NAME 阿玖仁 煉 (魔人)

 JOB 叛逆者

 SKILL 憤怒 格闘術 刀術 アイテムボックス 言語理解

 MP 測定不能



「――――は?」


 異常なステータスに目を丸くした。

 見慣れない言葉やこれまでのステータスとの違いが多すぎて、煉は処理しきれなくなっていた。

 そして煉は一言。


「……どこから突っ込めばいいんだ」


 そう呟く煉の背中からはやるせなさが感じられた。





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