第3話 異質な二人

 天馬が水晶でステータスを確認できたことにより、クラスメイト達は競うように自分のステータスを確認した。

 そのうちの大半は平凡でありふれたものだったが、何人かは勇者に準ずるジョブとスキルを与えられた。

 数人は天馬の取り巻きたちであった。


 NAME 上野 怜華

 JOB 巫女

 SKILL 祈祷 聖魔法 舞闘術 身体強化(舞)アイテムボックス 言語理解

 HP 250

 PW 150

 DF 100

 SP 100

 MP 400


 NAME 橋立 竜司

 JOB 聖騎士

 SKILL 聖剣術 聖魔法(盾)身体強化(防)アイテムボックス 言語理解

 HP 500

 PW 250

 DF 400

 SP 50

 MP 100


 NAME 須藤 和也

 JOB アサシン

 SKILL 暗殺術 気配感知 隠形 身体強化(速)短剣技 罠解除 危機察知 アイテムボックス 言語理解

 HP 150

 PW 200

 DF 50

 SP 500

 MP 300


「これはこれは。やはり異世界からの来訪者は強者が集まるようですな。これで我が国は安泰だ」

「しかり。これほど能力の高い方が複数いらっしゃるとは。魔王討伐も夢ではありませんな」


 周囲にいる貴族たちが笑いあっている。

 しかし、その眼は生徒たちを品定めしているようだった。

 腹の底ではどう取り入れようかと考えている。

 当の生徒たちの関心はそこにはなかった。


「おい、聞いたか?」

「あんだけ声がでかけりゃ聞こえるって。それより本当かよ」

「やっぱり魔王っているんだな。しかも討伐って。それって勇者の役目とか言われるパターンだよな」

「じゃあ、天馬君たちが討伐の旅に出るとか、そういう展開かなぁ」


 彼らの関心は魔王という御伽噺の存在に向いていた。

 彼らも年頃の男子たち。そういうものに憧れがあるのは否めない。


「今はまだ諸君らが気にすることではない。今後の成長によってはそう願うこともあるとだけ、言っておこう」


 皇帝がそう言うと、生徒たちは何処か緊張感を感じた。

 もしかしたら。そんな想像をしてしまったからだ。


「残るは二人。あとは其方らだけだが?」


 皇帝は煉と美香を見て声をかけた。


「俺らだけだって。どうする?」

「どうするも何もやるしかないじゃない。それに以外と興味あるんでしょ?」

「まあね。それは美香も同じじゃないか」

「当然。ここなら退屈しないかもしれない。そう考えたらなんだかワクワクしてくるわね」

「お前からワクワクとか聞けるとは思わなかった。俺は魔王討伐とか勘弁だぞ。できるなら自由気ままにのんびり旅をしたい」

「あら。それもいいわね。せっかくだから同行しようかしら」

「……やめてくれ。俺はのんびり旅したいって言っただろ」

「それはどういう意味かしら?」

「いや、お前といると面倒事に巻き込まれそうで平凡とは程遠いところに行きそうだ」

「失礼ね。私だってのんびりできるわよ。いつもいつも厄介事を持ってくるのは煉の方じゃない」

「いや、明らかにお前絡みのことしかない。大抵の問題はお前じゃなくて俺を経由しているからそう思うだけで、俺が厄介事を引き込んだことは一度もない」

「……へぇ。私に対して嘘を吐くのね。懺悔の時間はあげないわよ」

「………………いやいや、どうして俺が罰を受けることが決定しているんだ。せめて裁判を挟んでくれよ」

「……二年前の八月十九日」

「ごめんなさい。俺が悪かったです。すみませんでした」


 他愛のない会話をしながら水晶玉の前まで歩いてくる煉と美香。

 周囲の貴族たちは唖然としている。

 皇帝の御前でここまで好き放題話している人がいるなどとは思いもしなかったからだ。

 それは生徒たちも同様であった。

 学校のマドンナである美香がこんなにも楽しそうに会話をしている姿を見たことがなかった。

 しかも相手は煉。クラスでも特に目立たない男子で可もなく不可もなくという評価だった。(一部女子からは顔がいいと話題になっていたこともある)

 その二人は水晶玉の前に言っても話を続けている。

 見かねた皇帝は話に割り込んで声をかけた。


「次に行きたいのでな。早く済ませてもらえるだろうか」

「あら。すみません。煉がうるさくて」

「おれのせいかよ…………。まあいいや。それじゃお先に――」

「――待ちなさい。私が先よ」

「あ? 嫌だね。お前の後なんて絶対に嫌だ」

「確かに私の後じゃ煉は見劣りするかもしれないけれど、こういう時はレディーファーストでしょ?」

「こんな時だけそう言うのずるいだろ。…………胸ないくせに」

「煉?」


 ボソッと言った言葉に反応し、美香から冷たい声が出た。

 顔は笑っているのに背後には般若が立っているのを煉は見た。


「ご、ごめんなさい。……ど、どうぞ、お先に」

「そう。いい子ね」


 煉は一歩下がり、場所を美香に譲った。

 美香は煉の様子を気にすることなく水晶玉に触れた。


 NAME 江瑠間 美香

 JOB 天才

 SKILL オールラウンダー(一部特殊スキル以外全て使用可能)

 HP 2000

 PW 1000

 DF 1000

 SP 1000

 MP 1500


 玉座の間に静寂が訪れた。

 その場にいる誰もが声を出すことができなかった。

 それほど美香の能力は異常だった。

 皇帝でさえも驚愕の表情を浮かべている。

 生徒たちも唖然。特に天馬は誰よりも驚いていた。

 その場にいる全員が同じことを思ったことだろう。

 まさか勇者を越えるなんて、と。


「何よ天才って。不愉快だわ」

「お前、この空気の中でよくそれが言えるな」

「仕方ないでしょ。本心だもの」

「てか、やっぱりじゃねぇか。思った通りのチート性能。前から思っていたけどやっぱりバグってたんだな」

「やめてよ、煉まで。ぶっ飛ばすわよ」

「はいはい。程々にな~」

「次は煉の番よ。これで私よりおかしくなかったら本気でぶっ飛ばすから」

「…………無茶ぶりにも程があるだろ…………」


 そういう煉だが、異常な空気の中平然としている。

 それだけで煉もおかしいと言えるだろう。


「――あ? 何だこれ?」


 NAME 阿玖仁 煉

 JOB 

 SKILL 火魔法(初)身体強化(全)格闘術 刀術(全)アイテムボックス 言語理解 

 HP error

 PW error

 DF error

 SP error

 MP error


 煉のステータスもかなり異常だった。




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