刑事追う影

フリーターである江端は滝本、富川と立川で遊んだ帰りに恋ケ窪のユリコを訪ねた。しかしユリコの兄・信之は江端を快く思っておらず、ある日、二人でいるところを追い出されてしまう。腹を立てた江端は仲間の鈴木、脇野はある計画を実行に移す。世田谷区内で警備会社の事務所強盗の一報を受けた青山班は現場に急行し、金庫にあった現金数千万円を奪い、黒塗りの車に乗った三人組の男の捜査を開始する。足早に動き出す青山班を、外の野次馬に紛れて見守る滝本は趣味としてもう二週間も初動捜査班の出動を追いかけている。一方、江端らは多摩方面に逃走し、検問される前に人の少ない丘陵地で車を乗り捨てて、改めてタクシーで北に向かった。青山班は車で移動中、背後につく車に三度の既視感を感じた。青山主任は車を止め、カメラを構える滝本に接触しようとするが、寸前で逃げられてしまう。尾沢刑事部長は乗り捨てられた黒塗りの車が若葉台で発見され、盗難者であったとの連絡を受け、青山に伝える。青山は裏を読んで丘陵地の南北に分かれて捜査するよう命じ、青山らは中央線、尾沢らは京王線沿線を当たることにした。滝本は一旦調布の自宅に帰り、立川で遊んでいる仲間の富川に刑事を探すよう求めた。尾沢は稲城で、府中から客を乗せてきたタクシー運転手がバッグを一人づつ持った三人組を若葉台から南多摩まで乗せたとの証言を得る。青山は犯人が立川か登戸方面に向かった可能性を視野に、ひとまず立川に急いだ。富川は自らの遊び場にバッグを抱えて入ってくる江端らを怪しく思う。着替えをして出てきた江端のことを電話で滝本に伝え、彼もまた立川に向かった。青山が立川駅で張り込むなか、急行アルプスの自由席に江端は乗った。そこに滝本がやって来て、青山に江端のことを告げる。動き出してしまった急行列車を追いかけるように、青山は至急新宿に向かった。吉原は立川に残り、富川の遊び場で気絶していた鈴木、脇野を見つけて逮捕する。新宿駅到着ホームには続々と警察隊が集まるはずだったが、急行アルプスは先行列車の人身事故により国分寺駅の近くで停車し、江端はどさくさに紛れて客車を脱出する。中央線が遅延しているとの連絡を受けた青山は国分寺に引き返し、停車中の急行アルプスを発見する。車掌によれば扉を開けて逃げた客がいたという。青山に同行している滝本は恋ケ窪に見当をつけ、他の青山班の集合を待ってユリコのアパートを訪ねる。部屋には包丁を握った江端と、放心したユリコ、そして息絶えた信之がいた。江端は独り占めにした三つのバッグの金を切り刻み始め、青山に止められた。江端は貧しいながらもユリコを過剰に守る信之を心変わりさせようと思い立って強盗をしたというが、ユリコは手錠をかけられる江端を見て走り出す。青山を押しのけて追いかける江端だったが、ユリコは街道に出たところで車に轢かれてしまう。江端はうずくまり、青山に抱えられながら今度こそ逮捕されるのだった。

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