あらすじ・いちごの友情

栄地丁太郎

いちごの友情

その朝、多摩川の河川敷に流れ着いたいちごに頭を傾げる少年がいた。同じ頃、私立西和学園の男子生徒・水口純男の遺体が発見された。警視庁初動捜査班・青山班は直ちに現場に急行し、水口君に手をかけた犯人を探し出すため、両親への聞き込みを始めた。大変正義感が強く決して悪いことに巻き込まれる謂れはないとして犯人逮捕を強く願い出た。彼の日記には友情の証として、同級生でありテレビドラマで人気の女優・黒木みどりからドラマで使ったワッペンを貰ったと書いてあり、両親曰く肌身離さず持っていたらしいが、遺留品には含まれていない。一方、別働していた尾沢捜査部長は目撃者の割出しに成功し、水口君の死亡推定時刻となる昨夜21時頃、男女が河川敷で口論していたとか、走る若い女がいたとのことから、犯人は女であるとの見解を強めた。学園にはみどりの姿もあり、昨夜は撮影の後にお忍びでいちごケーキを一緒に買い、途中で別れたという。下校時刻になって生徒たちにみどりの人となりを生徒たちに尋ねると度々性格が変わり、犯罪の未遂まで至ったとの証言を得る。これを受け青山主任は吉原刑事に命じてみどりを照会させた。尾沢はケーキ屋で聞き込みを行うが、川にいちごがあったと親に語る少年と鉢合わせる。照会の結果、みどりは1年前に万引き行為で補導されていることが判明した──。青山班はみどりの写真家である父・雄二と母・恵子を訪ね、子役の頃から役と同じことをする癖があるとの証言と、昨夜はケーキを買って帰ってきたことを確認した。ケーキ屋での出来事からアリバイに不審を感じ、みどりに事情聴取を行うため撮影所に向かったが、学業との両立のため予定を押しているとして拒絶された。両親や芸能事務所はみどりが強引な捜査によって体調不良になったとしてクレームをつけたが、当のみどりは水口君の葬式に出席し涙を流した。数日後に改めて撮影所を訪れると、ドラマの収録は止まっていた。聞けばみどりは両親とともに行方不明になったという。青山班は雄二と話した際に近日中に娘との撮影旅行に出ると聞いており、目的地とされる伊豆の温泉街に向かった。そこで、二人は見つかった。みどりは今度のドラマで人を殺すシーンを再現するため水口君を殺害したと自供し、証拠としてワッペンを差し出した。雄二はカメラをみどりに向け続け、呆れた青山は雄二を叱ったが、それすらも十年前に急死した脚本家による、みどりと雄二をモチーフにした没シナリオの再現だと明かした。恵子は目の前の現実に半狂乱となった。みどりはテレビの中から姿を消し、やがて殺人者であることが世間を駆け巡った。雄二は娘の写真集を発売し、激しい批判を浴びながらもベストセラーとなったが、別荘で首吊り自殺した。その事実に少年院送致が決まったみどりは何を思うのか──西和学園の教室には今は亡き水口君に捧ぐ生花と友情のはずであったワッペンだけが残されている。

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