第8話 偽りの言葉、偽りたい心

「のろい?もしかして、みんながのろまになっているって意味ののろいか?」

「なんで、そうなるんですかぁ。祈りの反対の呪いです。呪術の方ですぅ」

「う~ん」

 カナメは腕を組んで考え込む。


「よしっ」

 ぽんっと手を叩く。アイリスも納得してもらい、ほっとする。


「とりあえず、それでもいいから教えてくれ」

「ふぇっ?」

 虚を突かれるアイリス。

「なっ?時を止めるもかっこいいしさ」

 アイリスはうつむく。

「かっこよくなんて・・・ありません・・・。卑怯な・・・悪質な・・・呪いです」


「どういう価値観なのかはわかんねーけど、親から貰った能力を・・・そんな風に言うもんじゃね」

「あんな親たち、知りません!!あんな人たちと同じ血が流れているなんて、汚らわしい、汚らわしい・・・汚らわしい!!」

 アイリスは突然気性を荒くして、自分の腕を爪を立てて引っ掻く。

「やめろって・・・」

「うぅううううっ」

 カナメはアイリスの手首を掴んで辞めさせる。

「はぁはぁはぁっ」

 

「落ち着いたか?その悪かった」

「いえ・・・私もすいません」

「で、その悪い。夢があと少しで叶いそうってので俺も、抑えられないんだが、魔法を教えてくれ」

 アイリスは困ったような顔をして、カナメを見る。

「無理です」

 

 カナメはショックで心臓がドックンと大きくなった後、止まったかと思った。

「私には・・・」

 カナメの心臓がトクトクトクッと速い鼓動で動く。


「うううっ」

 当然苦しそうにするアイリス。

「おい、大丈夫か?」

「かなり・・・魔力を使ってしまいました。あなたが魔法を学べるようになんとかやってみます。なので、そろそろ、限界ですっ、ごめんなさい。とりあえず、解除しますが、私の、話すことに合わせてください。約束ですよ?」

「おっおう」

「アブジェクション」


 世界が動き出す。

「うわあああぁ。あっ・・・あれっ」

 ジェイボーイが目の前から消えたカナメを探す。


「うわあああぁ、リリアン!!」

「うぅぅっ」

 ジェイボーイの言葉にわずかに反応するリリアン。


「二人とも。この人は・・・敵じゃない」

「お前は・・・アイリス」

 ジェイボーイの声にアイリスは目を背ける。


「まさか、お前の差し金か、くっ。お前のことなんて信じられるか、呪われた一族め」

 アイリスは目を見開き、自分の腕を強く掴む。そして、寂しそうな、諦めた顔をする。

「おいっ」

 カナメが止めようとするが、アイリスが目で止める。


「私と彼は無関係です・・・。けれど、この人はエリザベス様の縁者です」

「なっ」

 ジェイボーイが急に大人しくなる。

「彼は世界をただ独りで巡り歩き、心身を鍛えあげ、世界を救う男。私達と共にこれからディスターツ学園で研鑽を積む仲間です」

 ジェイボーイがまじまじとカナメを見定めようとする。そして、決めたかのようにギロっとアイリス。

「まぁ、エリザベス様に会えば、わかることだ。それより・・・お前がいつ俺らの味方になったんだ、お前と共に歩む人生など、俺たちにはない」

 ジェイボーイはリリアンを慈しむように見て、そして、意識を失った。

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