第4話 生と死の炎 フェニックス
ガサガサッ
カナメは音のする方を見る。
(人か。それも男女二人。14、5歳・・・同い年くらいかな)
「おっとっと、話はできるんかな。ハロー、こんにちは、ニーハオ、アンニョンハセヨ?言葉はわかりますか」
歩み寄ろうとするカナメに対して、警戒感を高める二人。
「あっ」
カナメは後ろの気絶した熊をちらっと見る。
「一緒に食う?」
「リリアン、詠唱をフレアだ!!」
「おっ、日本語ね」
「オーケー、ジェイボーイ」
リリアンと呼ばれた少女が詠唱を唱える。
「赤きフェニックスに見初められし、炎よ。かの者に力を与えよ。フレア!!」
ジェイボーイと言われた少年の両の腕に炎がうねりながら渦巻のようにまとわりつく。
「うおおおおおおおっ。それだよ!それ!!」
興奮するカナメ。
「やはり、こいつは他国のスパイか!維持しろよリリアン」
襲い掛かるジェイボーイ。
「おっとっ」
「くっ」
顔面を狙って振り下ろした拳を後ろに飛んでかわすカナメ。
「おおっ、こわっ。火傷ですみそうもないな・・・てかっ」
(骨の髄まで焼かれんのかな。でもさ・・・)
「魔法への感謝が足りないよ、お前。あと、君。その魔法僕にちょうだいよ」
「はぁあん?」
「ひっ」
苛立ちを見せるジェイボーイと怖がるリリアン。
「おい、リリアン。俺が守っから、ちゃんと火を絶やすんじゃねぇ」
「えぇ」
「うおおおおおおっ」
ジェイボーイの連続攻撃。フック系の攻撃を力いっぱい振り回す。
そして、それを間近で興味津々に見ながらかわすカナメ。
ジュゥ
ジェイボーイはその力任せの動きと焦りで汗をかき、それが炎に当たり、蒸発する。
「満足か?おん?」
カナメはニヤッとする。
シュッ
「あぐっ」
直線的に顎に突き刺さったジャブにジェイボーイはくらっとしてその場に倒れ込む。炎も消える。
「魔法の無駄遣いだ、ジュニアボーイ」
ぴくっとジェイボーイが反応する。
「リっ、リリアン・・・フェニックスだぁ、はぁ、はぁ」
「私には・・・それにあなたにも」
「やれっ!!」
「あっ赤きフェニックス。御身、かの者にしばし貸し与えん!!フェニックス!!」
ジェイボーイの体全体が清らかな赤い炎に包まれる。
「へへっ」
途切れそうだった意識が正常に戻る。疲れもないようだ。
チッチッチッ
「っ・・・」
ジェイボーイが痛みを感じる。しかし、それはカナメが与えた痛みではない。その炎が徐々にジェイボーイの体を蝕む。
「あー、これは逃げたほうがいいやつかな?」
人類最強の男と言われたカナメだったが、危機管理能力も長けていた。最強と呼ばれたのはあくまでも結果であり、カナメはただただ、体を鍛えた先にそれがあると信じていただけだ。
―――もっと、見ていたい
求めていたものが目の前にある。
欲求も沸いてきたが、怪我・最悪再起不能を考慮し、逃げようとする。
「逃がさねぇよ」
炎越しにジェイボーイは薄ら笑みを浮かべていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます