第2話 古郷 要(こごう かなめ)

「いや、マジかよぉ・・・」

 男は飲もうとしたビールを掲げたまま動かさずに、テレビで起きた異質な出来事に心を奪われていた。


「カナメ、なんと、8秒の壁をあっさり抜いた!!これは・・・私は夢を見ているのでしょうか・・・?」

 アナウンサーも事実を信じられない様子で解説する。


 100メートルを悠々と走り切った後、ぞろぞろと9秒後半に選手たちがゴールに到着する。

「リプレイをご覧ください。おっ、驚くべきは前半50メートルです・・・。見てください、スタートは若干出遅れているカナメ選手ですが、最初の50メートルを計ると・・・ほら見てください、3秒台で走り切ってます」


 男は慌ててネットで検索する。

『古郷要』

 SNSでも古郷要がトレンドワードに上がっている。

『古郷要 格闘家』

『古郷要 陸上』

『古郷要 100メートル』

『古郷要 ドラック』

『古郷要 孫』


 男は『古郷要 ドラック』を選んで検索する。

『やばくね、要』

『絶対、どこかの国の怪しいドラック使ってるよ』

『いやいや、どこかって・・・日本でそんなことあるか?』


「まぁ、でも・・・」

 ないとは思いつつも、また目の前のテレビを見ると、冷めた顔をしているカナメを見ると引き締まった体だが、そこまで筋肉がついているように見えない。男はあごに手を当てながら、彼に何かしらの秘密があるのではないかと疑心暗鬼で見る。


「はっ」

 男は、今度は『古郷要 シューズ』で検索をする。

『要はカワノの最新モデルのシューズ使ってるらしいぞ!?』


 パチンッ


「やっぱり」

 テレビの映像を写真で撮って汚い画質で画像をアップしているのを、さらに拡大する。

 いかにも速く走れそうな形をしている。

 

 男はドヤ顔をしながら、下にスクロースしてリコメントを見ると、

『でも、その靴。佐藤も鈴木も小林も履いてたぞ?』

「違うかぁ~~」

 男は天を仰ぐ。




 半年後

「はっはっはっは」

 満員電車で思わず、男は声を出して笑ってしまった。手にスマホを持っており、画面には、

『世界最速の男、世界最強も制覇!?その才能異次元!!』

(あいつ、やっぱやべー奴だな)

「次は日本橋、日本橋」

「おっと、やべやべ」

 男はスマホの電源を消すのを忘れたまま鞄に詰め込み、電車を降りる。男は見落としていたが、男の興味をもっと惹くニュースがあったが、男は現実世界を歩む。


『異次元の男、光の中に消失!?』

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