「補正」
彼氏と別れた。理由は愛想が尽きたのことだった。連絡を終えた後、不思議なほど冷めた。思えば私に隠れて携帯を何度も見ている機会が増えた。どこかで勘づいていたからだろう。
今にして思えば、欠点ばかりの男だった。口下手だし、気が利かないし、不器用だし、運転下手だし、駐車も下手。でもそんな姿も愛おしかった。恋人という補正でなんでも美しく見えた。なんでも愛おしく思えた。
でも今は違う。ただの欠点。クソ程欠点。次はもっとマシな男と付き合おう。
数日後、用事があって元彼の家の近くを通りかかった。葬儀の看板が見えた。
「えっ?」
故人に元カレの名前が書かれていた。
用事を済ませて、元カレの家に向かうと母親から全てを聞かされていた。病が進行していたこと。カレンダーを見るたびに何度もため息をついたこと。彼女に迷惑をかけたくなかったから別れを切り出した事。
たびたび携帯を見ていたのはおそらくカレンダーを確認していたからだ。
最後の最後まで不器用すぎるよ。私は涙を呑んで御焼香を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます