「絵画」

冷たい目をした女性が僕を見ている。鳥肌が立つほど美しいその姿。


 ああ、なんて恐ろしい。そして何で美しいのだろう。思わず手を伸ばそうとした。


「お客様。もう閉館時間ですのでどうか」

美術館の職員が僕に声をかけた。僕は憑き物が取れたように肩を振るわせた。


「しっ、失礼しました」

僕は早足で出口へ向かった。


「ああ、またか」

 美術館の職員がそう呟いていたが、構わず僕はその場を後にした。



 数日後、美術館の中で職員が首を吊った。あの女性の絵を抱えながら。

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