「外側にあるもの」
「ダメだ。書けん」
作家業を生業としている僕は今、スランプに落ちていた。まるで脳に粘着質のものがへばりついていて、思考が固まっている。書けない。全くと言っていいほど、筆が進まないのだ。
きっとそれはアイデアが枯渇しているからだろう。自分の中にも限界はある。僕は新たなアイデア発見の為に部屋から出た。
歩いた。ひたすらに歩いた。青い空。白い雲。歩き回るランドセル姿の小学生。スーツ姿の男性。
さらに歩いていくと森。川。現代社会から存在が薄れたものが見え始めた。
すると先ほどまで脳にへばりついていた汚れのようなものが剥がれていく気がした。
締め切った部屋の窓を開けたように心が体が開放感を覚えている。
そして、アイデアが無数に湧いて出た。すぐに懐の中に入れていたメモ帳を取り出した。
手が止まらない。書いても書いても足りない。
手を進める中、気がついた。いや、気がついたというより忘れていたのだ。忘れてはいけない感覚。自分が書きたいと思っているものはきっと、自分の外側にあるのだ。
閉鎖では何も生まれない。自然と涙が溢れていた。
アイデアを書き終えた後、辺りを見渡すと辺りは暗くなっていた。
来た道を確認しようと携帯で地図を開こうとしたら、圏外の表示が出ていた。
さて、どう帰ろうか。
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