「電子世界」

携帯の電源を切った。


 理由は度重なる連絡の数々と無計画に触るのが嫌になったからだ。


 そのまま僕は散歩に行くことにした。扉を開けると今の僕の心を投影したような果てしない青空が広がっていた。


 雲一つない完璧な晴れ。高鳴る胸の鼓動に任せて、外に飛び出した。


 周囲を見ると皆、携帯を触ったり、音楽を聞いたりしている。


 どれほど形態という物がこの社会に浸透し、影響力を持ち続けているかよく分かる光景だ。


 まるで自分だから世界から切り離された気分。


 しかし孤独感はなく、どこか実家に帰ったような安堵感が僕を包み込んでくれた。


 子供の頃は携帯などなくとも普通に暮らせていた。不自由さの中でも工夫次第で楽しめていたのだ。


 いつから工夫する事の楽しさを忘れてしまったのだろう。


 携帯から完全に離れる生活は難しいかもしれないが少しずつ付き合い方を考えていこう。


 そう決心した僕を温かい夕陽が優しく照らした。


 

 


 


 

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