「灰色の森の中」


 雄大な自然を眺めながら、僕は胸いっぱいに空気を吸い込んだ。やはり自然はいい。心が安らぐ。


 それもそうだ。昔から人は木と関わってきた。森の中で暮らし、木や枝を使い様々なものを作ってきた。


 だけど今、僕が暮らしている場所は自然とはかけ離れた灰色の世界だ。人工物が生み出した人工的な森の中で住んでいる。


 自然とは違い、動物に襲われないし、季節の寒暖差で命を奪われることも飢えることもない。しかし、どこか冷たい世界だ。だからこうして、自然と向き合っている。


 時計を見ると時間が迫っており、家に向かわなければ行かなくなった。生まれ故郷を去るような名残惜しさを感じながらも、僕は家族が待つ我が家に向かった。

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