「紙飛行機」


 深呼吸をしながらビルの屋上に立っていると紙飛行機が飛んできた。


 音を立てることもなく,ただ静かに僕の視界を横切って進んでいる。


 数センチにも満たない薄く脆い翼。しかし上手く作れば,どこまでも飛んでいける面白い存在。


 この紙飛行機の製作者は今、見ているとしたら何を思っているのか。


 どうでも良いのか。はたまた、美しく飛んでいるのを見て、喜んでいるのか。


 自分の手が加わったものが何かの結果を残す。それにはきっと喜びを見出すはずだ。


 最も僕にはもう何もないけどね。

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