第5話 入部(その5)
カレンは入部届の用紙を事前に用意していたからなのか入部届にはとっくに入部希望欄には『軽音楽部』と名前の部分には『カレン・スペンサー』と書いてあり、それを見た明日奈は愕然とした様子で肩を竦め顔を下へと俯かせていた。
「おお~、軽音部に入部する気満々だね~」
巴はそう言いながら誇らしげな顔で明日奈を見下すような目で
「巴、明日奈が困っているんだからそういう目で見ないの!」
「ごめんごめん、カレンってば。明日奈とはいつもこんな感じだからつい…」
「私はいつも辞めてって言っているでしょ!巴」
「幼馴染なんだからそのぐらいいいじゃんない」
「親しき中にも礼儀ありっていうでしょ!」
巴と明日奈の口論が始まり、カレンはあわわわとした様子で止めようとするも何をどうすればいいのか分からずにいた。
「取り敢えず軽音部の部室に行きましょうか?巴」
「そうね」
カレンと巴は明日奈を後にし、軽音部の部室へと二人仲良く向かっていった。明日奈は(巴が途中でこければ…カレンをスチューデントアイドルに勧誘できたんだけどなあ)と内心前向きに思いながらもカレンをスチューデントアイドル部に引き込むことを諦めていない様子だった。
「巴はどういうバンドが好きだったりするの?」
「私はいわゆるお父さんたちが聞いていた世代のバンドとか好きでギターとボーカルだけのバンドのZXとか好きかなあ。海外だとレッドツェッペリンとかディープパープルとかも聴いてるよ」
「その辺なら私も聴いてるよ、レッドツェッペリンのあの独特なリフとか好きで学校行くときもよく聴いているんだ」
「クイーンとかも聴いてる?」
「聴いてる聴いてる。歌物のバンドだけど結構発声方法とか参考にしてたな~」
「だから校歌歌ってるときあんなに伸びのある歌い方していたんだね」
巴はカレンの音楽のルーツを聞きながらなるほどと頷きながら巴はカレンの歌の上手さに納得していた。
(カレンはアイドルよりも軽音部で練習すればもっと凄いボーカリストになれるぞ)巴は将来設計まで考えており、スチューデントアイドル部で才能を枯渇させるわけにはいけないと真剣に考えていた。
「巴には色々ありがとうって思っているの。明日奈が熱心にスチューデントアイドル部に誘うから断ろうとしていたんだけど中々言い出せなくて…それに私スチューデントアイドルにはいい思い出がないから…」
「スチューデントアイドル嫌いなの?」
巴はカレンを見ながらスチューデントアイドルが好きではなさそうな様子に驚いていた。
「嫌いっていうよりかは中学の頃スチューデントアイドルが好きだったクラスメイトからいじめられたりしたからあまり印象がよくなくて…」
カレンは一気に顔を俯けながら回想していた。
「カレンも辛い思い出があったんだね、それなら軽音部に入ってその辛さもバンドサウンドで忘れられといいね」
「ありがとう、巴。あなたのおかげで新しい一歩に進める気がしたわ」
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