第2話 入部(その2)

 カレンの高校での初めての友達となった明日奈はとても元気で明るく、ラノベとかでよくある幼馴染系ヒロインのような雰囲気を持った少女で、カレンのイラストと歌声に魅了されてしまいすっかり明日奈自身オタク道へと入門してしまっていたようだ。


 「明日奈はどこの中学出身なの?」


 「私は星浦ほしうら中学出身よ、カレンは?」


 「私は東京の秋葉中学ってとこにいたんだけど親の仕事の都合でここの高校を受験したの」


 「そうなんだね、ここは富士山くらいしかないような田舎だけど馴染めそう?」


 「まだよくわからないけど自然あふれる空気とかは気にいってるわ」


 カレンは明日奈に微笑みながらこのS県N市星浦町ほしうらちょうの街の雰囲気や空気感をとても気に入っていることを伝え、これからの高校生活に夢を膨らませながら担任の教師がやってくるまで延々と楽しそうに二人は会話をしていた。


 星浦町はS県N市のベッドタウンで人口は国勢調査によれば59169人程の人が生活しているみたいだ。ベッドタウンではあるが最近はアイドルファイトの影響の為か観光客が多く、年間に訪れる旅行者はおおよそ15~29万人。


 アイドルファイトとは5~6年ほど前にプロアマ問わず、学生ならスチューデントアイドルとして歌やダンスなどのパフォーマンスを競い合う大会で去年の出場したスチューデントアイドルの数は7913ものグループが大会に出場していた。


 第2回アイドルファイトを優勝したスチューデントアイドルV'zによってその人気はゆるぎないものになり、武道館で決勝戦が行われるまでにレベルの向上を生んだとか。カレンにとってアイドルのレベルの向上なんてたかが知れているわけでハードロックやヘヴィメタルのようにハイレベルではないと認識していたのだ。


 カレンは東京にいた頃、スチューデントアイドルが好きな同級生にイラストや自分の歌をバカにされたことがきっかけでスチューデントアイドルに関してはかなりの嫌悪感を抱いていたがアイドルが好きな明日奈の前では顔を引き攣らせながらも苦笑いで話題を変えようとしていた。


 明日奈はそんなカレンの様子を見ずにスチューデントアイドルの話題ばかりでカレンはとても退屈に感じてしまい、(早く違う話をしたいなあ…)と内心思っていた。


 教室の中にはカレンと明日奈以外の生徒もいつの間にかいて、担任となる教師が向かってくる足音さえ聴こえてきた。


 扉を開ける音がガラガラとなり、長めの金髪をなびかせながら教室に入る外国人男性がやってきたのだ。


 「え~っと、今日から君たちの担任となる友石ジョニーだ。よろしく」


 ジョニーと名乗った担任は一言だけ自己紹介を済ませるだけで、話を進めようとする。


 「今から体育館に向かって、入学式始まるから今から行こうか」


 生徒達はジョニーの指示に従い、廊下に二列で体育館へと向かっていった。


 カレンは明日奈よりも後ろの列におり、桜咲く入学式が始まるんだと実感した。


 体育館の中には3年生と教師、色んな来客がパイプ椅子に座って待っていた。


 ステージの壁にはご入学おめでとうございますと大きく書いてある紙が貼られてあり、カレンは憧れのラノベのような高校生活を送れたらと夢と希望にあふれていた。

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