第2話 学校に登校する
空良は朝の学校へと向かう登校の道を歩いていく。
今日は絶好調の快晴だ。風も心地よく運動をするのに持ってこいの季節。
自分の名前が空良だからだろうか。空の天気が良いと空良もやる気になるのだった。
地球も応援してくれているのを感じる。
「よーし、やるぞー!」
手を振り上げて学校に向かっていく足を速くするが、
「おっと、張り切りすぎないように気を付けなくちゃ」
駆けだしたその足の速度をすぐに緩めた。
去年は張り切りすぎたせいで登校中に怪我をして万全の状態で試験に挑めなかったのだ。全力を出せなかったし、痛みに気を取られた一瞬の隙を突かれて他人に勝ちを持っていかれてしまった。同じ失敗をしてはいけない。
空良は気を引き締めて、何かにつまづいて転んだりやってきた何かにぶつかったり道路脇の溝に嵌ったりしないように気を付けて進んでいくのだった。
やがてそう間もなく到着する。少女の足でも同じ地域にある学校はそんなに遠くない。
どこにでもある平凡な外観をしている四角い校舎。普通に運動が出来る広さのある校庭。ここが空良の通っている近所の中学校だ。
今年は転びもぶつかりも嵌りもせずに学校に到着する事ができた。まずはその事を喜び、準備が万端である事に満足する。
友達と談笑しながら入っていく生徒達はみんないつも通りだ。
今日は大事な大会の学校代表を決める選抜試験のある日だが、多くの生徒達にとってはそうではない。
みんな去年出た生徒会長が今年も出ると信じて疑っていないようだ。確かに彼女は強い。両親も知っているぐらい。
自分が挑戦するよりもその活躍が見たいという憧れを持つ生徒もいるかもしれない。でも、今年の空良は負けるつもりはなかった。
「今年はまどか先輩に勝つから!」
「あら、わたしだって負けるつもりはありませんよ」
「うわっ、まどか先輩!」
噂をすれば何とやら。空良は慌ててその場から飛びのいた。いつの間にか背後に立たれていた気配に全く気が付かなかった。
桐生院まどか。生徒会長を務める彼女は優しく落ち着いた眼差しで下級生を見つめていた。
「そう身構えなくても。まだ試合は始まっていませんよ」
「そうですね。今年のあたしは落ち着いています」
「今年はどこも怪我をされていないようですね。本気のあなたと戦えそうで何よりです」
「ベストコンディションを整えてきましたから。もう怪我を言い訳にはしませんからね。勝ちますから!」
「フフ、元気があるのは良い事です。では、試合の時間に。また会いましょう」
余裕のある涼し気な背中を見せる彼女を見送って空良は一息ついた。
「ふう、相変わらずプレッシャーのある人だな。でも、今年はあたしが勝つから」
去年初めての試験を経験してから空良も成長したつもりでいる。今年こそはやると決意を固めて。
空良は下駄箱で上履きに履き替えて自分の教室に向かっていった。
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