細くて折れてしまいそう
上履きのまま踏む雪は何とも不快な音が鳴り響く。
試験が終わった後のため息と歓喜が渦巻く教室を早々後にし、何となくすぐに帰る気にならずに俺は一人屋上に足を向けていた。
思い出が深すぎるこの屋上から、下校し行く生徒を見下ろす中に一際目立つピンク(薄)のコートにピンク(濃)のマフラーの女生徒が見えた。
あの「バイバイ」から雪とはほとんど疎遠になったが、一度だけ話をした。
どうしても引っかかっていたことを訊く為に俺が半強制的に話した形ではあるが。
二週間ほど前のその日、俺は昇降口で待ち伏せしてやって来たところを突撃する形で、
「雪が修学旅行を休んだ理由って何なの?」
と早口で訊いた。
雪は申し訳なさそうな笑顔を一瞬作ってから、
「知らない方がいいよ」
とだけ言った。
世の中知らないほうが良いことは多いが、どうしても気になった俺は追随して理由を訊いた。
すると雪は「後悔しないでよ?」と忠告した後に、物凄い顔をしてこう言った。
「どう転んだとしても、私にアリバイを作る為、だよ」
その時の雪の物凄い顔は、
身の毛がよだつ思いをしたのを覚えている。
校門を出て行くピンクピンクを目で追いながら、雪の言葉の意味を思い出して俺は後悔した。
やはり、世の中知らないほうがいいことはあるね。
修学旅行のUSJで不良共を
大方の表向きの目的は、不良に襲われて怪我をした俺を後日雪が看病なり気遣いなりをすることで、ますます俺に取り入ろうとでもしたのだろう。それが風花や瑞花を動かすための表向きの理由だろう。
そして、どう転んだとしても、の一言に雪の思いの全てが詰まっている。
つまりだ。
その結果、俺がどうなろうが構わなかった、例え死んでしまっても構わなかったってところだろうな。
寧ろ死んでくれたら、好きでもない
そうなったときに都合が悪くならないように、雪はその場に居合わせないようにしたということだろう。
血の気の引くような
根拠は俺の質問に答えた雪の、
途方もなく悲しい結論が、当たってなければ良いのにな、と思いながら遠く小さくなる雪を見つめていると、後方から先程俺が鳴らしたのと同じ不快な音が聴こえた。
「夏樹、帰らないの? 今日は私も部活休みだし帰るけど」
声に振り返れば、ベージュのダッフルコートを着た鏡が冷風に身を
「どうして俺がここにいるのが分かった?」
「……なんとなくよ」
「凄いな、さては
「馬鹿な事言ってないで、ほら、早く帰りましょ!」
「ああ……」
でもその前に。
今日は
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