まったくぴったりタイトル通り、とある少年に暴走トラックが突っ込む顛末のお話。
ショートショート、というか小ネタというか、一撃の切れ味鋭い小品です。ただ困ったことに感想をどう書けばいいのか難しいというか、いいところや好きなところに触れようとすると、どう頑張ってもネタバレは避けられない。加えて、絶対に予備知識なしで読んだほうが面白い作品だというのもあって、もし未読の状態でこの文章を読んでいる人がいたら、今すぐ作品本編に向かってください。
以下はネタバレになります。
タグにある「脱力系」、まさにこの語の通りの作品です。最後の最後、結末までたどり着いた瞬間のこの落差。一見腰砕けのオチのように見えて、でもこれが結構すごいというか、腰砕けなのに爽快感があるんです。いわゆる勧善懲悪、スカッと胸のすく心地よさ。仮にただの脱力系の小ネタで終わっていたとしたら、まず物足りなく感じていたであろうところ、でもこの要素のおかげでしっかり物語している(正しくは因果が逆というか、ちゃんと物語しているので心地よい)。
加えてもう一点、この大オチのとんでもないところは、実質最初から丸見えだったところです。ある種の出オチ。タイトルの時点で見えていたはずのものが、でも完璧に迷彩されていたと、そう気づいた瞬間のこの「やられた」感。お見事というか気持ちいいというか、最初に言った「切れ味鋭い」とは本当に文字通りの意味で、もうスッパーンと首を落とされたような気分。
というわけで最後のオチ、そのワンアイデアがとにかく強い作品なのですが、でもそこに至るまでのドラマが地味にいい仕事してます。うまい、というか堅実というか、普通にシリアスなサスペンス(?)をやっていて、普通にのめり込んでしまう。いやここでの強い緊張があってこそ、最後の「脱力」にカタルシスが生まれるのですけれど。総じて見た目ほど単純じゃない、というか読んでいるときの印象以上に仕事が細やかな、でもその辺一切気にせず読める見事な作品でした。上品な感じ。