第75話

 あれから、アテナに流されるままに部屋へ戻った俺。アテナが素早く説明をして、「みんな、さっさと終わらせて智くんとイチャつきたいか~!」みたいなのが始まった。


 正直に勘弁してくれと思ったが、まぁなんだかんだ皆がやる気出してくれたので……うん、まぁ俺が我慢すれば何も問題は無いな……はぁ。また羞恥心との戦いかぁ……。


 アスタロトから魔王城の座標は聞いていたため、部屋にはヘラとアリアドネ、そしてエリーを残していった。ヘラはめちゃくちゃリベンジを従ってたが、アテナの言葉に大人しく従っていた。


「きっと、あれ倒したらアリアドネちゃんの記憶も戻ると思うから、君が一番最初におかえりって言ってあげて」


 だとさ、あまりの神々しさに神かよと思ってしまった。まぁ神なんですけど。


 そして現在、俺、シトラス、セラフィス、アイハ、グリゼルダさん、アテナの六人は一瞬にして魔王城の魔王の間扉前にワープした。


「よいしょ、到着」


「……なんか、本当に魔王軍の本拠地って感じがするな」


 周りを見たけど、空はなんかすっごい目に悪そうな紫色の雲だし、紫色の雷がなってるし、そこら辺なんか穴ぼこだらけだし……って、その穴ぼこはアスタロトがやったやつじゃね?


 あと、それからこの部屋の中からめっちゃ凄い力感じるんですけど。今まで戦ってきたやつよりも、殺気が段違いだ。それよりも強く感じる、『生きたい』という強い気持ちが何よりも伝わってくる。


「それじゃあ、ボク行ってくるから……待っててね」


「の、のう?本当にお主1人で大丈夫なのか?」


「流石に心配……」


「そ、そうですよアテナ様……せめて私も一緒に」


「気持ちは嬉しいけど、本当に大丈夫だって!」


 と、両手をフリフリして余裕なことを伝えるが……正直、心配なのだ。


 いくら、アテナがデコピン1発で倒せると言おうが、ちょっとコンビニ行くくらいの感覚でラスボス倒しますと言おうが、やはり心配なものは心配なのだ。


「なぁ、本当に……」


「大丈夫だって!ボクが君を残して先に行くわけないじゃないか!」


 と、アテナが俺を抱きしめてくれる。


「ボクは大丈夫だから……終わったら、これよりも強く抱きしめくれると約束したら、ちゃんと帰ってくるから」


「……そのくらい、何時でもしてやるよ。だから、帰ってこいよ」


「うん、任せてーーーそれじゃあ、行ってくるね」


 と、魔王の間に続く扉を開け、その中に消えていくアテナ。


「……アテナちゃん、本当に大丈夫かしら?」


「そう信じる……しかないんだろうな」


「ぬぅ…こう、背中がムズムズするのう。何も出来ないというのは」


「そうだな……ほんと、今この中で何が起こってるのか心配で心配でーーーー」


「終わったよー」


「「「「「早っ!?」」」」」


 ぴょこん、と扉から顔を覗き出したアテナ。嘘だろ!?そんな簡単に終わるもんなの……あれ?


 無くなっているんだけど………さっきまで感じていた強い力無くなってるんだけどぉ!?


「え!?本当にアテナ!?」


「む、酷いなぁ智くん……ほら、ボクを抱きしめて確認するかい?ボクの体を隅々まで知っているキミなら、判断は可能だろう?」


 両手を広げるアテナに、俺は直ぐに抱きしめ、アテナの体を感じる。その度に、俺の中にある勇者因子が、このアテナは本物だと、一生懸命に訴える。


「んっ……智くん、ちょっと力入れすぎだよ……まぁ、気持ちいいからいいけど」


「そんくらい、心配したんだ……黙って抱きしめられとけ」


「んふふ……嬉しいなぁ」


 こうして、ラスボス戦は僅か一分も足らずに終わってしまった。


 のちのち、どうやって倒したかと聞くと、映像を見せられたので見た。


 まじでデコピン一発で世界から弾き飛ばされてた。



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次回、最終回……かなぁ?

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