その頃、アスタロトは
「俺の名前はアスタロト。『賢者』のアスタロトだ」
「ふむ……いきなり書面で会いたいと言うから何かと思ったが、まさか本物が来るとはの」
現在、アテナ王と面談中である。何故かは、人間軍との恒久な停戦条約を結ぶため、それと、今この世界の危機を王に伝えるためである。
「当たり前だ。俺に戦う意思がないことは、あんたらが付けろと言った間封じの指輪で事足りてるだろ?」
「…まぁ、そうだな」
アスタロトの右手の指に輝く、紫色の宝石がくっついている指輪。間封じの指輪と言い、装備している者の魔力の流れを止めるという能力がある。
「……とりあえず、停戦条約の方については、我々も検討しよう……異世界の勇者方には悪いかもしれんがな」
「別に、戦争にならないだけマシだろ。こんな状況で俺らがいがみ合ってどうすんだよって話だ」
「しかし、王よ」
2人の話し合いに、控えていた臣下が口を挟んだ。
「そう簡単に、魔族のことを信用してもいいのでしょうか。この世界の危機と言いつつ、もしかしてこちらの寝首をかこうとーーーー」
「んなだせぇことするかよ。そもそも俺は、命をもうとある奴に預けてるからな。この件が終わったら潔く死ぬーーーまぁそんな話より、この世界をどうやって救うかの方の話し合いをしようぜ、王様」
「…………そうじゃな。この世界の危機とならば、魔族も人間も関係ない。今はこの世界を守る戦友だ。きっと、アテナ様もそう言わすはずだ」
「…………助かる」
アスタロトは、静かに頭を下げる。その事で、背後に控える臣下がザワザワと騒がしくなる。
「……それよりもアスタロト殿。この手紙には昨日の夜に訪れると書いてあったのだが、なぜ遅れたのだ?」
「魔族は、嫌ならば力でねじ伏せろがモットーだ。これに反対するやつ全員がねじ伏せてたら遅くなった。本当に済まない」
「……………」
アテナ王は目を閉じて、ぶぅと疲れたようにため息を吐いた。
「……お主、『賢者』ではないのか?」
「何言ってんだ?この時代、魔法使いだろうと近接戦はやんなきゃダメだろ?」
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