第64話

 その後、詳しい話は明日するから!と何とかヘラと約束を取り付けた。精神的に、アリアドネと一緒にいた方が良さそうだったから、今日だけヘラとアリアドネを同じ部屋でいさせることにした。


 そして、突然始まった俺の正妻争奪戦についてなのだが、俺が逃げ回ることでなんとかう有耶無耶………うん、有耶無耶に出来たと思いたい。


 いや、別に俺は正直全員等しく大切に思ってるから正妻とか気にしないでいいと思ってるんだけど………ってなんか俺自然とハーレム許容してね?なんで?


「ま、因子の影響ーーーというかほとんど因子のせいだね」


 そして俺は今、久しぶりに夢の中でアテナと出会っていた。


「というか、出番的に順番が決まるなら本来ならボクが一号で正妻じゃない?ほら、キミがこの世界に来る時に一方的にだけど会ってるし」


「それは会ってるって言えるの?」


「言えるんじゃない?ボクが言えるって言えるのなら。だってほら、ボク女神だし」


 と、豊満な胸を揺らしながら腰に両手を当ててふふんとするアテナ。可愛い……じゃなくて。


「で、脱線したけど、何の用だ?」


 アテナは滅多なことじゃないと俺をこっちに呼ばない。本当は毎日呼びたいらしいが、本体の方に負担がかかるらしい。


「あ、そうそう。今日はね、報告が二つあるんだ」


 ゴロン、と胡座を書いている俺の膝に頭を載せるアテナ。なんとなくだが頭を撫でる。


「んっ……まず一つ目ね。あのヘラちゃんとアスタロトくんが見た黒い繭の事なんだけど………うん、あれがこの世界を滅ぼす癌だね」


「……繭……ねぇ」


「そう。まだ詳しく正体は分かってないけど、あれは次元の放浪者さ」


「次元の放浪者?」


 なんそれ。


「うーん……なんていえばいいか分からないけどさ…君達異世界組は、ボクの力によって呼び出され、転移した。それは分かるかい?」


「ん? まぁ普通の人間とか存在だったらまず無理だよな」


 地球から月とかだったら、化学の進歩で行けるが、こうして地球から何億光年離れてるかもわからんところに一瞬で移動なんて、それこそ神しか無理だろって話だよな。


「次元の放浪者は何もかもを無視するのさ。時間、距離、果ては次元まで。空気の中を舞っている塵やホコリのように、自由に動き回り、ふと気まぐれに止まった世界に災害や、富をもたらす謎の存在………ごめんね、分かりにくくて」


「………あー、うん」


 ぶっちゃけなんて言ってるかは知らんが。


「まぁ、とにかくやべーってことだろ?」


「あ、うん。そうだね。神が介入しないといけない存在なんだ」


 よいしょっ、と言って上半身を起こすと、アテナは俺の膝上に座る。またまた自然と腕がアテナに伸び、柔らかいお腹に腕が回された。


「そして、ここからが二つ目なんだけど、正式に、宇宙神から神の介入が認められた」


「へー、宇宙神………ん?」


「宇宙神のことについては気にしないでいい。ボクの上司……というか、この宇宙にいる全部の神の上司なんだけど………まぁそれはどうでもいい」


「え?」


「だから智くん。明日いつものように魔法陣を準備してくれ。とびっきりの助っ人を準備するよ」


 と言って、振り返ると、優しく俺の口にキスをする。その瞬間、意識がどんどんあやふやになる。


 ねぇ待って?何?宇宙神って何ー!!


 俺は、混乱したままアテナと別れさせられた。

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