第62話

「………なるほど、黒い繭、禍々しい気配に魔王の消息不明………こりゃまたなんとまぁまぁ………」


 はぁ……世界の危機とはアテナから聞いてはいたけど、正直やってらんねーっていいたい。


 あれから、アスタロトが背負っていたヘラというらしい魔族の女性はシトラスとセラフィスに任せ、介抱をお願いし、途中で我慢できずに様子を見に来たアイハに、その女性を介抱するようにとお願いした。


 そして、俺はアスタロトから見た光景を聞いたのだが………まぁ正直分かんねぇと言ったところだな。


 絶対元凶はその黒い繭というのは分かるんだが、アスタロトはそれほど詳しいことは分かっていない。ボロボロのヘラが目を覚ますの待ちって所かなぁ。


「それで、魔族側としての行動はどうするんだ?」


「………今はこんな状況だからな。魔王様もいないし、マモンーーーもう一人の四天王は相変わらず行方知らずだからな………今は魔族の一時的な王は俺だ。人間達に………永久停戦を申し込もうと思う」


「………まじ?」


「あぁ。ついでに人間たちにも協力して貰えるようになんとかしたいものだな………宝物庫を解放するか?いや、だがあそこは先代達の宝物があるわけだし、俺の一存では決めかねんし………うーん」


「おい、悩むのは後にしろ」


 このままだと1人の世界に入り込もうとしていたので、頭を軽く魔法で小突いてからこちらへ戻させる。


「……っと、すまん。……まぁとにかく。俺がここに来たのはヘラを預かって欲しいのと、その報告だ。俺はもう行く」


「あ?休んで行かないのか?」


「バカ。俺は今から魔族側に人間との永久停戦をすることにしたことを説明せにゃならん。もう一度今から魔王城さ」


 あー、やれやれと言って立ち上がるアスタロト。


「反抗する奴がいたらどうするんだ?」


「もちろんーーーーねじ伏せる」


 その瞬間だけ、魔王四天王としての威圧感をひしひしと感じる。俺、よくこいつに勝てたよなぁ。


「それじゃあヘラのことは頼んだ。色々と落ち着いたら回収しにくる」


「おう、気をつけろよ」


「抜かせ異世界の勇者。一体誰に言っている」


 じゃあな。と言ってこの部屋に備え付けてある窓を開けて飛び去っていくアスタロト。それを見送る俺。


「………帰る時もせめて玄関使ってくんねぇかなぁ………」


 そのせいで警報鳴りまくりなんですが。


 はぁ、とため息をつき、警報を遠隔で消していく。あいつ、ヘラを回収しに来た時は1発叩くか。


「………あのー」


「ん?」


 地面からぬっ、とアイハが登場する。あの、便利だからといってあまりその登場多用しないで貰えます……?ちょっと心臓に悪い。


「どうした?」


「いえ……あの、その………」


 何やら探す言葉が見つからずに上手く言葉に出来なようだ。それを黙って待っていると、アイハが俺の腕を掴んだ。


「その………見れば分かります!」


「おっと……って待て待て!俺肉体あるから!壁すり抜け出来ないから!」


 俺の腕を掴んだと思ったらそのままするすると床に沈み込むアイハ。


「あ、すいません!私、ちょっと慌ててて!」


「よしよし。怒ったりしないから、ゆっくりと落ち着こうな」


「は、はい!ひっひっふー、ひっひっふー」


 うん、呼吸をすることはいい事だけど、それラマーズ法な?気分落ち着かせるための呼吸法じゃねぇから。


 誰に教わったの。


「……ありがとうございます。マスター様。頭を撫でてくれたおかげで落ち着きました」


「ん、それはいいことだ。嬉しいのは分かったら今は抱きつかないで説明」


 正直嬉しいけど、優先順位あるから。終わったら何時でもしていいから。


「はい……それでも、やっぱり見てもらわないと分からないんです……私も、何がなんだが……」


「……なるほど?」


 ということは、下ではなにやら変なことが起きていると言うことか。それよ、説明もしにくいほどのものが。


「……とりあえず行くか。アイハ、案内お願い」


「はい!こちらです!マスター様!」


 と、今度こそ、アイハに腕を引かれ、ちゃんと扉から出た。そして、件の部屋へ辿り着くとーーーー


「あぁ、おいたわしや魔王様……あのものとの戦いで、記憶をなくしているなど」


「えと……その……」


「何この状況」


 アスタロトが連れてきたヘラという女性が、アリアドネに対し、いわゆる忠誠をさ下げるポーズをやっていと。


 え、まじでこれどういう状況?

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