第55話

 目下で、五条達がドンパチしている間にハインケル砦の屋上からこっそりと侵入していく俺たち。空に浮かんだいた、ガーゴイルなる魔族たちも、気づかれないように後ろからちょちょいと麻痺させて、戦場の影響を受けないところに飛ばしておく。


 屋上に無事にたどり着いた俺は、五条から「侵入に成功したら何か暗号を送ってくれ」と言われているので、とりあえず「トラ トラ トラ」と送った。


「……中は思ったよりも綺麗なのじゃな」


 砦内に侵入した俺たち。パッ、と見た限りでは魔族の姿は確認されず、砦内が荒らされていると言った感じもない。


「まぁ……アスタロトの気配がどうかは知らないが、不気味な感じはするが」


 シトラスの目を通して送られてくる視覚情報には、どんよりとした黒いモヤみたいなものがハインケル砦全体を漂っている。


「さて、肝心のアスタロトはどこにいるのかということなのだが……」


「ま、このモヤの発生源の元へ行けば辿り着くであろう…………こっちなのじゃ」


 俺にはこの黒いモヤがどこから出ているのか分からないが、シトラスには分かるようなので、黙って着いていく。廊下を曲がる度に、魔族の姿がないかどうか確認するが、いなかった。


 ハインケル砦最上階は、ロの形に廊下がなっており、一周した所で、シトラスの足が止まった。


「………やはりの」


「………どうした?」


「ご主人、我らはアスタロトの幻影魔法の術中なのじゃ」


「………幻影魔法?」


「のじゃ。対象に幻影を見せ、あたかもここをさまよっていると誤認させ、精神力をうばう魔法なのじゃが………我でもすぐに気づけないこの制度………敵ながらあっぱれとしか言いようがないの」


 周りを見渡しながら、シトラスは言う。


「それで、この魔法から逃げ出す方法は?」


「簡単なのじゃ」


 と、言うと、シトラスはこちらに視線を向ける。


「膨大な魔力で書き消せばいいだけの話じゃ」


「ーーーなるほど!」


 そう聞くやいなや、俺は直ぐに体内から魔力の渦を外へ放出させる。このハインケル砦奪還作戦に行くまでの間、シトラス特製スパルタ魔力練習というものを行い、体内の魔力を限界ギリギリまで絞り出し、終われば、気絶したように眠る生活を続けてきた。


 そのおかげで、俺の中にあるシトラスの魔力ではなく、純粋な俺の魔力量が増え、今までシトラスの力に頼りっぱなしだった魔法が、俺の力でも使えるようになった。


 まぁ、シトラス曰くまだまだらしいけど。


 ちなみに、魔力を使いすぎると、魔力欠乏症という、貧血みたいなものになるらしく、体内にある残り魔力が1割を下回ったら起こる症状だとか。これを無視して魔法を使うと、二度と魔法が使えなくなるため注意。


 俺は、今までシトラスに絞られた(魔力を)経験を生かしながら、膨大な魔力を放出させると、徐々に景色がゆがみ始めーーーー


「………素直に驚いたぜ。まさか、この俺の幻影をこんなにも早く見破るとはな。素直に賞賛に値する」


 パチパチと、二回拍手の音が聞こえ、そちらを見ると、先程まで廊下だったのが消え、大広間になっていた中心に、潤を女に変えた元凶のアスタロトがいた。


「ギリギリだったな。あと少しであの嬢ちゃんの性別は変わったままだったぜ?」


「………めんどくせぇことしやがって本当に………」


 そのせいで、こちとらかかなくてもいい汗とかかくし、余計な心配も産まれてくるしで、最悪だったぜ。


 アスタロトは、指をパチンと鳴らすと、俺たちにこういった。


「約束をちゃんと守って来てくれたからな。いまさっき、キチンとあの嬢ちゃんの性別は治しておいた」


「………本当だろうな?」


「本当さ。俺は魔族だが、誇りある魔王四天王の肩書きを持っているんだ。約束を守ったものには、それなりの褒美を返すさ」


「褒美、ね……」


 …………やっぱこいつムカつく!無意識かどうかしらんが、褒美って言ってる時点で明らかに俺の事見下してやがる。


「さて、心配の種も無くなった事だし………いっちょ派手におっぱじめようじゃんかよ」


 と、アスタロトの濃密な殺気が俺達に襲いかかる。


「シトラス」


「のじゃ?」


「こいつは、俺一人でやる。お前は手を出すな」


「…………分かったのじゃ」


 と、俺の気持ちを組んでくれたシトラスが、大きくジャンプして下がる。


「いいのか?そこのお嬢ちゃんと一緒でもいいんだぜ?」


「ぬかせ。お前は個人的にムカつくからサシでやる」


 あと、魔族かどうかは関係ねぇ!お前がイケメンだから個人的に超ムカつく!!


「お前のそのイケメンな顔、ボコボコにしてやんよ!!」


「やれるもんならやってみなぁ!あと、お前それ人に言えねぇからな!」


 イケメン枠は五条だけで充分なんだよ!





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

カクヨムコンに現在、私の作品を三つ応募しています。


 まず、カクヨムコンの方に、『声しか知らない嫁さんと本当に付き合う』と、『死霊術師ネクロマンサーってそうじゃねぇだろ』


 そして、短編の方に『隣の家の不思議なシスターと不思議な関係』を応募しております。


 さらにわまたまた短編の方へ『結婚しよう、メイドさん』という勢い100パーセントで書いた短編を投稿しました。宜しければそちらも応援をよろしくお願いします。


 応援の方、よろしくお願いします。ついでに、この作品のフォローと星評価三つもよろしくお願いします。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る