第53話

 ふーん………アリアドネね。


「ーーーわかった。丁重にもてなすようにな」


『わかったわ。ありがとうね、智くん』


 と言って、通信が切れる。


「智、どんな内容だったの?」


 奥野さんに膝の上で抱きしめられたまま潤が聞いてきた………こいつ、慣れたのか?


「いや……どうやら俺ん家の前に人が倒れていたらしくな……保護をしたという連絡が来ただけだ」


「へぇ……名前とか聞いても?」


「アリアドネ、というらしい」


「………アリアドネ?」


 何やら聞いたことあるような反応をする潤。


「……どうした?」


「いや……アリアドネ………どこかで聞いたことあるような……」


 顎に手を当てて真剣に考え始める。その顔は普段のおとこの娘の顔がキリッとして少しかっこいい感じなのだがーーーーーー


「…………hshshshshshshshshshs」


 ーーーー後ろの奥野さんのせいでそんな空気がブレイクしている。そのせいで全然真剣に考えているようには見えない。


「………アリアドネ……あっ!」


 思い出したのかポン!と手を叩いた。


「思い出したよ!智!アリアドネは女神の名前だ!」


「ーーーー女神?」


 それってアテナ的な?


「うん。ギリシア神話に出てくる女神で名前の意味は『とりわけて潔らかに聖い娘』って意味があるんだ。アリアドネの糸って話は有名だよね」


「………そうなのか?」


 俺、全然神話とか読まないから全然知らんのやけど。一度北欧神話は普通に気になって見たことがあるけど………。


「うん。詳しいことは省くけど、テセウスに恋したアリアドネは、迷宮ラヒュリントスを脱出することを条件に援助を申し込むんだけど、そこで活躍したのがこのアリアドネの糸なんだ」


 なんでと、迷宮に入ったアリアドネは、その糸を迷宮の入口に括りつけて、テセウスにこの糸を辿れば迷宮から脱出出来ると言って糸を渡したらしい。


「それで、二人は無事に迷宮ラビュリントスを脱出するんだけど、その後に、アリアドネに恋したディオニソスがアリアドネを…………まぁ寝とっちゃうんだけど」


「ンブッ」


 潤から聞きたくない言葉ベスト3がでたため、少し吹いてしまった。


「まぁ他にも、アリアドネが悪阻つわりになったから、テセウスがとある島に彼女を置き去りにした後、ディオニソスが妃にしたーーーという事もあるんだけど」


「なんだそのテセウスとか言うやつ」


 甲斐性が無さすぎだろ。一度娶ると決めたんなら最後まで面倒みろや。


「………まぁ神話系の話って平気で人の奥さん寝取る話とかあるかーーーー」


「お願い。潤から寝取りとかいう言葉聞きたくないの。お願いだからこれ以上言わないで」


「あ………うん」


 いや、ほんと。多分ショック死するやつとか出てくるからさ。


 とか思ってたら、隣からシトラスが袖をクイクイとしてきた。


「………の、のう?ご主人……寝取るってどいういーーーー」


「忘れろ」


「ーーーーのじゃ?」


「いいかシトラス。君は意味なんて知らなくていいんだ。頼むから綺麗な君のままでいてくれ」


「……の、のじゃ……ご主人がいうなら……まぁ仕方ないの……」


 と、顔を赤くして詮索を辞めるシトラス。


 お願いだからあとで調べないでね?




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 カクヨムコンに現在、私の作品を三つ応募しています。


 まず、カクヨムコンの方に、『声しか知らない嫁さんと本当に付き合う』と、『死霊術師ネクロマンサーってそうじゃねぇだろ』


 そして、短編の方に『隣の家の不思議なシスターと不思議な関係』を応募しております。


 応援の方、よろしくお願いします。ついでに、この作品のフォローと星評価三つもよろしくお願いします。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る