第52話

 そして、一週間が経った。現在、この王都の入口では約300人ほどの精鋭達が集まっている。


 周りを見渡せば、チラホラと見知った顔がある。どうやら、クラスメイトを何人かは参加しているようだ。


「ふむ………いい士気の保ちようじゃの」


「シトラス?」


 馬車の中ではなく、上から全体を俯瞰している俺たち。隣で兵たちを見ていたシトラスがボソリと呟いた。


「高すぎず、低すぎず……ちょうどいいバランスで士気を保てているのじゃ。長期戦が予想されるであろう攻城戦にはいい雰囲気じゃの」


「へー」


「大河、もう入っていいぞ」


 シトラスに相槌を打っていると、下から五条の声が聞こえてきた。


 俺たちがここにいる理由は、もちろん現在女体化中の潤がちょっと女体化してることをバレないようにするための準備をしていたからであり、五条のメイドのメルルさんと、潤の彼女の奥野さんがサラシを頑張って巻いている。


 どうなら、日に日にどんどんどことは言わないが、大きくなっているらしく、シトラス曰く、呪いが定着し始めているのだという。サラシだけでは厳しくなっていたので、アテナ王に頼んで一つ大きいサイズの服を着せているので、まだ何とか誤魔化せている。


 しかし、シトラス曰く、あと2.3日で解呪しないと完全に、潤の性別が女として定着してしまう。このままだと潤と奥野さんの百合ップルが出来てしまう。それだけは何としてでも阻止しなければ。


 ここから、ハインケル砦まで、最低でも一日かかるので、着いたら直ぐにアスタロトの奴をシメなければ。


 五条に入ってもいいという許可を貰ったので、馬車の上から膝もつかないで着地ーーーーこの世界に来て本当に人間離れしたよなーーーーーして、そのまま馬車の中へ入る前に一応ノックをした。


「潤?奥野さん?入っても大丈夫?」


「えぇ、大丈夫よ」


 奥野さんから許可も得たために馬車の中へ入る。入ると、そこには当然、潤と奥野さん(メルルさんは五条が声をかけてくれたタイミングで外に出ている)がいたが、状態がおかしかった。


「………何してんの?」


「……のじゃ」


 俺とシトラスの呆れた声が響く。目の前では、潤を膝の上に乗っけて思いっきり後ろから抱きしめている奥野さんの姿。潤の顔は赤くなっているが、それは絶対に好きな人に後ろから抱きしめられているという理由だけではない。


「あら、決まっているでしょ?大河くん。ジュンニウムを補給しているのよ」


「へー」


 なんか頭が痛くなってきたので、とりあえず二人のことは無視して対面に座るーーーというか、ぶっちゃけ座りたくないが、席はここしかない。


 はぁ……と、ため息をついた瞬間、シトラスの魔法で生み出された使い魔がなにやら出てきた。


「ん?」


「のじゃ?」


 この使い魔は、何かあった時のための連絡用として置いといたもので、この使い魔に魔力を流すと、对となる使い魔に魔力がつながり、通信ができるというものである。


『智くん、ちょっといいかしら』


「グリゼルダさん?」


 声の主は、緑髪の美しい女性で、俺と同じ死霊術師ネクロマンサーであるグリゼルダさんだった。


「どうしたのじゃ?」


『いや……そのねぇ?実は家の前で倒れている人がいたんだけど……』


「倒れてる人?」


 あんな所に?なんで。


『その、実は記憶喪失らしく、名前しか覚えていないらしいから、保護しちゃったんだけど……一応の報告をね』


「へぇ……一応聞いておくけど、性別は?」


『女の人よーーーーちょっと大きい声で言えないのだけど、どうやら魔族っぽくて……』


「………魔族?」


『えぇ。だから家主であるあなたにちょっと聞きに来たんだけど……』


「ふーん……」


 怪しいだけど。なんかすごい怪しいんだけど。嫌な予感………という訳では無いが、後々なんかものすごく面倒くさそうな予感しかしない。


 ほら、この前だってアテナに黒幕は別よ!って言われたばっかりだし……。


「………まぁいい。魔族だろうと、戦闘の意思がなければ、普通に宿として提供させてやってくれ」


『感謝するわ。智くん。カリーナちゃんがその子に懐いちゃってね………』


「そっか………名前は?」


『えぇ、その魔族の名前はーーーーアリアドネといいうらしいわ』





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カクヨムコンに現在、私の作品を三つ応募しています。


まず、カクヨムコンの方に、『声しか知らない嫁さんと本当に付き合う』と、『死霊術師ネクロマンサーってそうじゃねぇだろ』


そして、短編の方に『隣の家の不思議なシスターと不思議な関係』を応募しております。


応援の方、よろしくお願いします。ついでに、この作品のフォローと星評価三つもよろしくお願いします。

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