第51話
「呼ばれてとび出てジャジャジャジャーン!ボクだよ!智くん!」
「お前、そのネタどっから拾ってきた?」
その後、またもやシトラス監修の特訓メニューをこなし、気絶するように眠った俺は、今日も今日とてアテナの元へ来ていた。
「それで、俺を呼んだということは、きちんと、分かりやすく説明してくれるんだよな?」
「がってん!ボクの素晴らしい説明にうっかり抱きつかないように!」
「なんだ?抱きついて欲しくないのか?」
「ごめん!やっぱり抱きついて!」
いや、まぁ抱きつかないんですけどね。
「コホン、それじゃあ説明するね」
と、アテナはどこからともなく取り出したホワイトボードに何か図を描き始め、説明を始めた。
まず、本当の敵は魔王ではなく、魔王城から出てくる闇の気の持ち主ということ。
さらに詳しく観測すると、なんとその闇の気の持ち主は別世界からの来訪者だということ。
しかも、このままだと魔王軍とか人間とか関係なく全てを滅ぼすほどに強大な力を持っているため、異世界転移組だけでは絶対に倒せないということである。
「ーーーだから、本当は魔王軍と戦争している暇とかなくて、急いでラスボスのとの戦いに備えたいんだけどね……天啓はしばらくの間は使えないし、伝える手段もない……キミを介して伝えるのもいいけど、魔王軍の方は、魔王がその情報を公開しない限り、人間と協力することは無い」
「……思ったけど、なんで魔王は情報公開しねぇの?」
「多分、余計な心配と、犠牲を出したくないんじゃないかな?自分で抑えられる分は抑えておく、そういうスタンスなんじゃない?ボクには魔王の気持ちとかは分からないけどね」
と言って、ぶぅと息を吐き出したアテナ。疲れたのか、胡座をしている俺の膝にコテっと頭を置いた。
「………ほんと、この世界はこんなにも平和なのにね」
「………そうだな」
「ねぇ、智くん。キミはボクのことを恨んでいるかい?」
「ん?」
なんだ?なんでそんなことを聞くんだ?
「ボクはさ、君たちのことを無理矢理巻き込んで、戦争をさせてしまっている。いくらこの世界を救いたいと思ってと、君たちからしたら到底許せるものでは無いだろ?」
「うーん……」
とは言うけども………どうだろ?
確かに、最初の方は余計な真似を!とか、めんどくせー!とかは思ってたかもしれんがーーー
「……まぁ俺個人としてはもういいかなって。それに、アテナが呼んでくれたおかげで、エリーにシトラス。セラフィスにカリーナやアイハの、グリゼルダさん……それに、お前にも逢えたからな」
俺は、膝に寝転んでいるアテナの頭に手を置いて、そのまま優しく撫でた。
「そうだな……まぁ気にすんなよ」
「…………………」
そういった俺の顔を、しばらくぽかんと見つめたアテナ。
「………フフっ」
耐えきれなくなったのか、優しく笑い始めた。
「……ありがとう、智くん。流石ボクが惚れた勇者様だ」
「………お前、いきなりそれ言うのやめてくんね?」
普通に恥ずいんだけど………
「だから、これはボクからのお礼………んっ」
アテナが俺の頬に手を添えると、そのまま俺の頬にキスをするアテナ。すると、体の中から力が湧いてきたような気がした。
「キミの勇者因子の活性化率を上げさせてもらったよ。これで、キミも少しは強くなっただろう」
「……サンキュ」
「………さて、そろそろお別れの時間だけど……何か言いたいこととか、聞きたいことある?」
「………あ、じゃあ一つだけ」
俺は、アテナにずっと気になっていた『潤の天職が何故か聖女である事件』について聞いた。
「……ふむ?それは珍しいケースだねーーーー例えばだが、勇者である五条クン。あの子は、勇者因子を与えられた人の中で、誰よりも正しく、誰よりも優しく、そして誰よりも正義の心に満ち溢れた強い子。だからこそ、あの子は勇者の名を継ぐに相応しい」
「まぁそれはそうだな」
あいつは誰にでも態度は変えねぇし、人付き合いがちょっと苦手な俺でも、ある程度の信頼は置いてるし、とりあえず困ったら五条に相談とかしてるし。
「聖女は、勇者と同じくらい優しい心を持ち、人に寄り添える力が一番強い人に与えられる」
「……あぁ~」
それはすげぇ納得。あいつは確かに人に寄り添える優しい奴だ。
でもよ、それだけだったら別に聖女じゃなくて、聖者でいいんじゃないと思う訳でして………。
「聖女と聖者は全くもって別物だよ。聖女は、回復や後方支援だけに大して、聖者はオールラウンダーで、前線で攻撃もできるし、後方では人を癒す。けど、聖女の方がやっぱり強いね」
「なるほどね……」
「そして、聖女になるための最重要条件がーーーーー誰よりも人目を引く可愛い顔の持ち主さ」
「………………あぁ~」
すげぇ納得したわ。そりゃああいつが聖女になるのは仕方ないわ。だって、彼女にしたいランキング一位だしな潤。男だけど。彼女もちだけど。
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