第49話
「そもそも、私が君達を呼び出すように天啓をした理由として、魔王城からありえないほどの闇の気を感じたことがきっかけなんだ」
アテナ曰く、それさえなければ、この後普通に産まれてくる勇者で、魔王は対処可能だったらしいが、断続的に感じる、闇の気にて、遂に魔王が本格的な力を手に入れたのか?と思ったアテナが俺たちを呼ぶように天啓を下ろした。
「でもね、ついさっき分かったんだけど、その気はね、魔王とは全くもって別物ーーーというか、魔王がそれを抑えようと頑張っている」
「……ちょっとまて……本当に待ってくれ」
マジでわからん。闇の気がどうたらかんたらとかはまぁいい。でも魔王が頑張っている?
「ごめんね、智くん。もっと詳しく説明したかったけど、どうやら時間のようだ」
「は?待てよ……俺このまま胸の中でモヤモヤしたものを抱えないといけないのか!?」
「ごめんね!明日までにはもっと分かりやすく説明するよ!愛してるよ!ボクの勇者様!」
「バカヤロー!こんな時に愛の告白なんていらねー!!」
いや嬉しいけども!今じゃなくていいだろーが!
「………煮えきらねぇ」
起きてそうそうの一言目がそうだった。
ったく、アテナめ……めちゃくちゃ気になることだけを言いおってからに。
隣を見ると、シトラスが俺に抱きついたまま寝ており、起こすのもしのびなかったため、先程アテナから受け取った情報について、考えてみることにした。
まず、敵は魔王軍じゃないということについて。
言葉通りに取るのなら、争うのは魔王軍じゃないということ。しかし、この世界での人間対魔王軍の戦いがどのくらい続いているとかは知らないため、これ以上の推測は不可。今は言葉通りに受け取ろう。
魔王城からのありえないほどの闇の気についてーーーーは、正直分からん。情報が足りん。
ま、簡単に推測するとしたら、魔王城から、魔王とは別のヤベェやつがいる、もしくは来ようとしている、もしくは目覚めた………。
目覚めた説はなしだな。それなら、ソイツは魔王軍のはずだし、アテナも敵は魔王軍だというはず。
そして、極めつけはあの慌てよう。あのどんな時でも隙あらば俺とイチャつこうとするやつが、慌てて1度も抱きつかなかったことだな。最後に爆弾は残しやがったが。
となると………まぁ、やっぱり異世界か、別次元からの来訪者説が一番濃厚かねぇ。
…………めんどくさそ。
俺はため息をついた。二度寝したらもう一度アテナと会えるか?多分無理だろうな……アイツは明日までって言ってたから、きちんと情報が整理できるまでは俺の事を呼ばない気がするし……って、なんか妙な信頼感出来上がってんな。
「……んま、とりあえず死なないように特訓するだけかなぁ」
「智様?起きてますか?」
「大河ー」
と、ぼーっとしてると、ドア越しからメルルさんと五条の声が聞こえてきた。
「おー、起きてるぞー」
とりあえず、返事をしたらガチャりと五条が早に入ってきた。
「どした?」
俺は、一旦抱きついているシトラスの手を剥がして、体を起こした。
「いや、朝ごはんでも一緒にどうだと思って」
「なるほど……」
それじゃせっかく誘われたし、お邪魔しよっかなーーーーーー
「むぅ……ご主人……」
コテっ、と俺を抱きしめていないことに気づいたシトラスが、俺を捜し求めた結果、膝に倒れ込んできてそのまままた眠りについた。
「………先、いっててくれ」
「…………おう、席は緑川の分まで取っとくな」
「よろしくな」
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