第48話

 包帯を持ってきたメルルさんに潤を預け、俺と五条は念の為に外で待機。20分ほど、外で待っていると、後ろからドアが空いた音が聞こえたのでそちらを振り向いた。


「……うん、パッと見普通の潤だな」


「そう……だね」


 モジモジして、どこか胸を気にしながら降りてきた潤。パッと見は普通の潤だが、なにやら少々歩き方が変である。


 ………あ(察し)。


 うん、俺は何も考えてないぞ。なんにも気づいていはいない。潤の名誉にかけてな!


「とりあえず、どうだ?」


「やっぱりちょっと苦しい………前みたいに戦闘は無理かな」


「お前、回復専門なんだから本当は戦闘しないでいいんだけどな……」


 潤の天職は『聖女』。特性としては、回復魔法が得意であり、後方支援を元とする。


 一瞬だが、天職が聖女って潤がこうなることを予想していたのか?とか思ったが、すぐ否定した。だって性別元に戻すし。


 あれか、やっぱ見た目で騙されたんだろ。うんうん。


「メルル。緑川の性別が戻るまでは、身の回りの世話を頼む。これは、君にしか頼めない」


「かしこまりました!亘様!さ、潤様、こちらです」


「う、うん……その、よろしくお願いします」


「大丈夫です!潤様をあの変態に任せる訳には行きませんから」


 今更だけどさ、あの変態よくここクビにならないよな。大丈夫なのか?色々な意味で。


 というか同僚にも変態扱いされてるのか……。


「……さて、じゃあ俺達もそろそろ部屋に戻るか」


「うむ」


 俺とシトラスは、あの屋敷に引っ越すまでに使っていた部屋を使ってもいいということなので、今日はゆっくりとハインケル砦奪還作戦に向けて、心身ともにしっかりと休ませることにした。


「それじゃあな五条。次会うときは来週だな」


「あぁ。頼りにしてるよ。大河」


 五条に手を振ってから別れ、いつも使っていた部屋に戻った。まだそんなこの部屋と別れてから全然日がたっていないように思われるが、ここを離れてからの一日の密度が濃すぎて、随分お久しぶりな感じがする。


「……さて、それじゃあ今日もうーーー」


「まぁ待つのじゃご主人」


 寝よっかなーとか言おうとした瞬間に、シトラスに言葉を遮られた。


「ご主人、少しでも生存率をーーーまぁ、ご主人なら心配ないとは思うが、あのアスタロトとか言うやつにも無傷で勝てるように特訓をするのじゃ」


「…………ん?」


 特訓?マジ?


 俺の格好見てみ?既にベッドに横になっててもう休む気満々よ?


「大丈夫なのじゃ」


「………?」


「終わった頃には疲れで自然と寝ておる」


 うわぁ、シトラス先生スパルタぁ……。









「………ん?」


 やべっ、寝てた………と言うよりも、眠らせらたよ、疲れで。ほんとに特訓終わった瞬間に寝落ちするとかヤバすぎだよあの訓練。


 目を覚ますと、そこは大小色とりどりの花が咲いている空間ーーーアテナか。


「た、大変だよ!智くん!」


 と、なにやら慌ててやってきたアテナ。その顔には、いつものような俺に甘えたがる顔じゃなくて、本気で焦っているような感じがした。


「どうした?そんな顔を顰めて。綺麗な顔が台無しだぞ?」


「ちょ!?今、そういう不意打ち禁止だから!」


 顔を赤くさせ、いつもなら喜ぶ褒め言葉さえ、今日は拒否した。


 ………なんだ?なんかやばいことでも起きるのか?


「ボクはね、この世界に感じていた闇の気がさ、ずっと魔王から溢れ出ているものだと思ったからキミたちを呼ぶように天啓を下ろしたーーーーーでも!違ったんだ!」


「……待て待て、ちょっと待て。いきなり言われても理解が追いつかんが」


 俺は、慌てていうアテナに落ち着くように言うが、アテナはそれさえも聞いていない。


「智くん!敵は魔王軍じゃない!それよりも!」


 …………はぁ?




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知っている人もいると思いますが、新作ラブコメを書きましたので、是非読んでみてください↓↓↓↓

『10年前。再会を誓ったあの子は狐っ娘神様』

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