第46話

「まぁ待てよ」


 飛んでいるアスタロトが徐々に高度を下げ、俺たちの方へ向かってくるので、自然と戦闘態勢になる。


「待てって。今日は別に戦いに来たわけじゃないんだ」


「……は?」


 アスタロトの発言により、ポカンとする。戦いに来たわけじゃない?


「お前との決着はハインケルでちゃんとつける。今日はお前の顔を見に来ただけだ」


「………なんのためだ」


 一応、念の為にアスタロトにバレないようにひっそりと魔法を練り上げ、いつでも殺せるように魔法を待機させておく。


「四天王で最弱とはいえ、バルバトスを倒したんだ。どんなやつかは気になるだろ?」


「…………………」


 じっ、とアスタロトの顔を見つめる。嘘を言っている様子は……ない、か?


「それだけじゃなかろう」


 シトラスが1歩前に出て、アスタロトの顔を睨んだ。


「お主、一体何を考えておる」


「へぇ?そちらのお嬢さんは察しがいいね」


 と、アスタロトが言った瞬間ーーーー


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」


「っ、潤!?」


 馬車の中から、潤の悲鳴が聞こえた。こいつ……何をした!?


「お前!」


「おっと……」


 まだ不完全だが、練り上げていた魔法をアスタロトへ向かって放つが、魔法に関してはあちらの方が上のため、障壁で打ち消されてしまった。


 バックステップで下がり、また空へと逃げるアスタロト。


「一応、あいつも四天王だったからな。仇討ちとしてお前を倒さなきゃなんねぇのよ」


「待て!」


「必ず来いよ異世界の勇者。でないと、あのがえらい目にあうぜ?」


 と言って消えていった………ってまて……嬢ちゃん?


 俺はシトラスを見る。しかし、シトラスは首を横に振った。


 ……ということは……?


「潤!?」


 俺は急いで馬車の中へ駆け込むがーーー


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!さ、智!?ダメ!こっち来ないで!!」


「んな事言ってる場合か!!」


 俺は、潤の声を無視して、そのまま馬車へとはいるとーーーー


「じゅ…………ん?」


「さ……智……」


 そこには、頭を手で抑えたアテナ王と、何やらおっきくなっている胸を両手で隠しながら、顔を赤くして涙目になっている潤がいた。


 ……………あれ?














「間違いないのじゃ」


 シトラスと潤が馬車の中へ戻ってきた。潤の顔は、恥ずかしさで顔が赤くなっており、その瞳には涙でいっぱいである。


「潤殿はアスタロトの呪いで性別逆転の呪いを受けておるのじゃ」


「あいつ……なんて呪いを残していったんだ……」


「うっ……僕、もうお婿にいけない……」

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