第44話

「ご主人……」


「マスター…」


 2人から声が聞こえ、シトラスとセラフィスが、抱きついてきた。


「……ありがとうなのじゃ。ご主人……我はーーー我は、こんなにも優しくて、素敵なご主人に呼ばれたなら、改めて、死んでよかった思えたのじゃ」


「私もです……マスター、ありがとうございます……」


「そ……そうか……」


 二人からの言葉に何やらものすごく照れくさくなる。やべぇ……二人のことが、今こんなにも愛おしい。


 俺も二人を抱きしめ返す。確かな温もりが俺の腕の中にある。


「俺の方こそありがとう……こんな俺だけど着いてきてくれるか?」


「もちろんなのじゃ。我の隣は、ご主人しか有り得ないのじゃ」


「もちろんです。私は、ずっとマスターと一緒です………」


「ありがとう」


 二人を強く抱きしめる。


 しばらく抱き締め続け、堪能したところで、本題に入った。


「それじゃあ、差し支えなければだけどーーー」


「ふむ。分かったのじゃ……と言いたいところじゃが、我別にそんな深刻な殺され方とかしておらんし……」


「そうなの?」


「うむ。我の世界ではよくある事じゃ。魔王である我が、人間と和平交渉を結ぶのが気に食わなかった反平和魔族からの裏切りにあってそのままポックリと」


「えぇ………」


 なんともまぁ……しかも、シトラスまで何も気にしていないというふうに喋るから反応に困った。


「まぁ我が死ぬ瞬間に、反平和魔族達には呪いをかけたから、向こうの世界は平和だと思うのじゃが………平和かのう……?平和だといいのう……」


 むしろ、シトラスの1番の心残りがそれだった。


 そして、次にセラフィスが喋りだした。


「私は……その、堕天した所から話さないとちょっと分かりにくいんですけど……」


 といい、何故セラフィスが堕天したのかを喋りだした。


 まず、天使の中にも貴族とか、なんかそういうのがあって、セラフィスはそこでも上位の産まれ出会ったらしい。


 セラフィスが産まれて6歳の時に、セラフィスの家と対立をしていた貴族の娘が、不注意で仕えていた神が大事にしていたツボを割ってしまい、その罪をセラフィスに擦り付けたらしい。なにそれ許せん。てか異世界に神っているのね……あ、アテナもいたわ。


 それで、当然神は大激怒。嘘の証言で塗り固められた不正の裁判で、セラフィスは堕天させられ、翼が半分黒になってしまった。


 その黒は罪の証。セラフィスは直ぐに地上へと落とされた。


 しかも、更にその罪を擦り付けられた貴族から追っ手が放たれ、10年後、ついに限界が訪れ殺されたのだという。


 うーむ………なるほど。


「よし、とりあえずそのクソ天使滅ぼすか」


「同感じゃ」


「マスター!?」


 ん?何してるんだ?セラフィス。そこどかないとお前を貶めた天使〇せないだろ?


「退くのじゃセラフィス。そうしないとその天使塵芥にできないじゃろう?」


「落ち着きましょう!私、そんなの望んでませんから!」


「だが断る」


「マスター!?」


「セラフィス。おまえが恨んでようが恨んでなかろうが関係ない。俺の女を傷つけたからぶっ殺しに行くんだよ」


「ま、マスター………その、気持ちは嬉しいですが……」


 ……あれ?なんで照れて……あ。


 あれ?……俺今無意識に『俺の女』発言した?まじ?


「ですが!マスター!その、異世界ですよ!私が呼び出されたの!どうやって殴り込みに行くんですか!」


「………あ」


 そういえばそうだったな。


「ご、ご主人!我も!我も!ご主人の女じゃからな!」


「あ……うん。そうだね」


 分かってる分かってる……にしても、ちょっとはずい。

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