第39話

 レイス。アストラル系のモンスターで、透明な骨の幽霊みたいな姿をしている。


 レイスに触れられると、生気というものが吸われるらしい。命に別状はないらしいが、吸われ続けると、歩けなくなるほどに疲れが溜まり、それがずっと取れないで、最悪餓死をするというそれはそれでまぁなんと恐ろしいやつである。


 撃退方法は、聖魔法というアンデット系の弱点である魔法をぶつけるか、ありったけの魔力を込めて魔力的に殺すかの二種類の方法しかない。


 実態は持たないため、いくら殴ってもダメージはゼロである。まぁこちらから触れると生気座れるんですけどねっ!


 どこからともなく現れるレイス達。聖魔法を使えない俺達は、大人しくシトラス大先生の活躍を黙って見ている。


 セラフィスもどうやら魔法が使えるようで、結界魔法という物をレイス達が力寄らないために貼ってくれている。そのおかげで、こちらは安全な場所から魔法を飛ばし放題である。


 シトラスが腕を振るう度、二体三体と一度に消えていくレイス。まだまだ数は多いが、着実と減ってきている。


 30分ほど、シトラスが腕を振るい続け、やっとレイスたちが消え、セラフィスが貼っていた結界も解けた。


「……ふぅ」


「おっと……」


「……す、すいませんマスター。魔法を使うのが久々で……」


 結界を貼るために、祈りを捧げるようなポーズから立ち上がると、ふらりとしたので急いで支えた。


「気にしない。セラフィスは今日目覚めたばっかりなんだから」


 エリーの手も借りながらセラフィスをおんぶする。やはり軽いな。


「………すいません、マスター……」


 首に回されている腕の力が少し強くなった。


「……ふぅ、これだけおい払えば今日はもう大丈夫じゃろう……」


「お疲れさん」


「ぬぅ……われも流石に少し疲れた……エリー、我もおんぶしてくれ」


「分かりました」


 と、エリーは素早く腰を下げると、シトラスをおんぶした。


「さてご主人。そろそろレイスクイーンの元へ参ろうぞ」


「あれ?引き上げって言ってなかったけ?」


「レイスが活性化するのは基本夜なのじゃ……じゃから、今だったらいるだろうに」


 と、シトラスが言うので、1番レイスクイーンの気配が強かったあの謎の物置へ移動する。


 ドアの前に経てばわかる。昼来た時とは明らかに違う空気感。感覚的に、その先にはきっといることがわかる。


「……この感覚……ご主人」


「分かってる」


 ゆっくりと、ドアを開けた。


 そこには、一人の女性がいた。


 窓から入り込んでいる少ない月光の明かりに照らされるように座り込んでいるその女性。幽霊だからか、肌は白く、着ている服も白かったが、髪と瞳だけは違った。


「……お待ち、しておりました」


 ゆっくりと、レイスクイーンの双眸がこの身を捉えた。


「ずっと、あなた達がここに来てからの行動を、ずっと見守っていました」


 言葉が紡がれる。


「……珍しい。言葉を話すレイスクイーンか……」


 エリーにおぶられていたシトラスが、スルスルとエリーの背中から降りた。


「シトラス?」


「安心せいご主人。言葉を話すレイスクイーンは知性を持ち、しっかりと考えることが出来るモンスターじゃーーー故に、敵対することはまずないじゃろう」


「はい、そもそも、私は貴方と争うためにこうしてあなた達の目の前に姿を表した訳ではありません」


 整ったレイスクイーンの顔が、悲しみで彩られた。


「どうか……どうか、お願いします。私を殺して貰えませんか………っ」

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