第38話

 食堂に入ると、エリーが作ってくれたであろうご飯のいい匂いが漂ってきて、さらに食欲が湧いてきた。


「智様」


「エリー、お疲れ様」


 配膳台を運んでいたエリー。クロッシュが被されており、中身は見えないが、まぁ不味いことは今までのエリーとすごしたことから無いことは判明している。


「にゅわぁぁ……疲れました……」


「ま、最初はそんなもんじゃて……ただいまなのじゃ」


 シトラスがカリーナを抱えて食堂に入ってくる。


「カリーナ?」


「疲れました……もう魔力すっからかんですぅ…」


「いや……その、最初に教えたのがご主人だったから、ついついそれと同じレベルで教えてしまったのじゃ」


「………あー」


 確かに、シトラスの教え方ってわかりやすいけど超疲れるんだよな………。


「ごめんな、セラフィス」


 俺は、抱き上げていたセラフィスを地面に下ろし、カリーナをシトラスから引き継ぐ。


「すまんのう、ご主人……」


「気にすんなって……よいしょ」


 完全に脱力仕切っているカリーナを片手で抱き上げる。


「それでは、皆様揃ったので、お食事としましょうか」









 やはり、エリーの料理は美味であった。魔力切れで上手く食べれないカリーナを、まるで雛鳥にご飯をあげているような気持ちになる。まぁ雛鳥に餌を上げたことないけど。


「ほらカリーナ。あーん」


「あー……」


 魔力切れから回復するには、しっかりした食事、そしてしっかりした睡眠が肝なのだという。シトラス先生の見解では明日には元通りとのこと。


 カリーナをシトラスとセラフィスに任せ、皿洗いをしているエリーを手伝いに行く。流石に1人でさせるのも悪いし、俺は皿洗いは得意だ。


 ほら、小学生の時に給食時間内に食べ終わらなかったら職員室にまで行って皿洗ってたからさ。その時に綺麗になっていく皿を見てから、なんかやらなきゃ行けない性分になってしまってな……。


 エリーが「メイドですので……!」と言って断ったが、それならご主人様命令として一緒に皿洗いをした。


 なんか新婚夫婦みたいだな……とか思っていると頬が赤くなったことを自覚する。チラッ、と横を見るとエリーもこちらを見ており、しかも頬が赤くなっていた。


 ドキドキと自然と高鳴る振動。俺とエリーは、どちらからともなく顔を近づかせ、その綺麗な唇に唇をーーーーーー


「…………っっっっっっ!!!!」


 悪寒がした。いや、エリーとキスすることにじゃないよ?


 まるで、屋敷を覆い尽くすかのように広まる悪意。俺は、目をつぶっているエリーをお姫様抱っこにして急いでシトラスと合流した。


「キャッ!さ、智様!」


「ごめんなエリー!」


 いや、ほんとごめんな……折角いい雰囲気になってキスが出来そうだったのに………。


「ご主人!」


「マスター!」


「シトラス!セラフィス!」


 はいよってくる何かに気づいたのか、セラフィスがカリーナを抱え、シトラスが忙しなく視線を動かしている。


 とりあえず、俺とエリーの雰囲気をぶち壊しにしたこの正体は許さん。


「ご主人!来るのじゃ!」


「何が!?」


 食堂の狭い場所では不利と判断した俺たちは急いでエントランスへと移動し、死角がないように背中合わせになる。エリーも戦闘はできるらしいが、心配なので俺が抱えたままにしておこう。


朝片っ端から追い払ったレイスが!この屋敷にまた集まってきてるのじゃ!」


「………っ!!」


『女王よ…………女王よ………』






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

新作ラブコメを書くかどうかのアンケ取ってます。近況ノート、もしくはTwitterにてもし宜しければ、アンケートに参加してください。たくさんの票が欲しいです。


結月さんのついったー

@YuzukiAoba

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る