第34話

 エリーがカリーナの面倒を見てくれるとのことなので、眠るカリーナを起こさないようにエリーへ渡す。


 さて、これから件の屋敷へと入るわけなんですが………。


「……これは」


「………むぅ」


 居ますね。えぇ、とてもとても良くないものが居ますね。


 シトラスの魔眼経由で俺の視界には、屋敷全体が黒いモヤで覆われている姿が映る。これは………一体どういうこと?教えて!シトラス先生!俺まだそこら辺の区別は付かないの!


 まぁそこはかとなく良くないものだということは分かるが。


「ふむ……これはあれじゃの。死者の怨念がこの屋敷に取り憑いているのじゃ」


「………ほーん」


「死者……ですか?」


 つまり、あれか。幽霊屋敷ってわけね。


「のじゃ……しかし、これはまた特異なものじゃの……」


「?どういうことだ?」


「……まぁ見ればわかるのじゃ」


 と言い、シトラスは屋敷の扉を開けて、中に入っていく。俺も慌ててシトラスの背中を追いかけるが、部屋に入った瞬間、背筋が凍った。


「………Oh……」


「…………これは」


 俺とエリーは中を見て絶句した。


「……?智様、何やら柔らかいものが……ヒッ!?」


 そして、寝起きカリーナは悲鳴をあげた。


 ………まぁうん、そりゃそうだよな………。


 だって、そこら辺めちゃくちゃ幽霊居るし。


『女王よ……女王よ……』


 しかもなんかめちゃくちゃ言葉も聞こえるから、ハッキリ言って気持ちわるい。俺は別に、幽霊は苦手ーーーというか見た事あるからそんなには驚かない……いや、やっぱ驚いたわ。


 とにかく、気持ち悪いです。なんだ?王族は分かって俺たちにこの屋敷を渡したのか?


 ……いや、それはないか。1度カリーナはこの屋敷に来たことがあるようだし、その時は何も異常はなかったらしいからな。


「さと、さと、智様!?」


 大量幽霊を見たカリーナが慌てた様子で俺のところに抱きついてくる。パニックになったカリーナを、エリーは抵抗せずに地面へと下ろしたようだ。


 カリーナを抱き上げて、幽霊を見ないように、胸に顔を押し付ける。まぁ声は耐えずに聞こえてるんだけど。


 てかこいつらが言ってる女王って何よ。誰のことを指しているんだ?


「……ふむ、これはアストラル系のモンスターの『レイス』じゃな」


「……よくシトラスはそう落ち着いていられるよな」


 カリーナの頭をよしよしと撫でながらシトラスへ質問する。


「何、我の部下にもレイスはいたからな。慣れであろ、慣れ」


 ほれ、行くのじゃと言いながらレイス達を浄化していくシトラス。シトラスさん、マジパネェっす。


「……とりあえず、行こっか」


「はい」


 俺は後ろにいるエリーに声掛けて、シトラスの後を追っていく。


 屋敷にいるレイスと呼ばれるモンスターの説明を聴きながらシトラスの後をついてく。シトラス曰く、今の俺にできることはないとの事。


「レイスは死した人の悪の部分が呪術師によって魔改造された生きた悪霊………というのが我の世界での説明なのじゃが……」


「はい、この世界では死んだ生き物の思念が霊という形になってこの世に姿をあらわす魔物です。物理攻撃は聞かず、聖魔法という魔法でしかレイスを倒すことは出来ません」


 シトラスから説明を引き継いだエリーの言葉に耳を貸す……が、研ぎ澄ましたら研ぎ澄ましたで、レイス達の悲鳴が聞こえてしまう。


「更に、レイス達はどちらかと言うと魔王軍派。昔には、レイスクイーンと呼ばれていた上位種が敵として立ちはだかったこともあります」


「なるほどねぇ……」


 ……あれ?じゃあこのレイス達のが女王女王言ってる理由って……。


「……まぁ、いるのじゃろう。ここにそのレイスクイーンとやらが……いつ住み着いたかは分からないがのう……」


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