第33話

 ガタガタ、と走る馬車へ乗っている俺と、シトラスと、昨日から晴れて俺のお嫁さんとなったカリーナ。御者台には、エリーが座り、馬の手綱を持っている。


 理由はもちろん、馬車を走らせることが出来る人がエリーしかいなかったからである。ほら、カリーナは姫だし、シトラスは魔王だし、俺は異世界人だし………いや、うん。申し訳ない今度一緒に練習しよう。


 さて、俺達が何故馬車に乗っているのかというのは、昨日、俺があそこから目覚めたすぐ後の話となる。


 アテナの領域から帰った俺は、目が覚めてそうそうに、エリーの素晴らしい物を拝みながれ目が覚めた。いやぁ、あれは物凄い光景でした。


 上にはシトラスが寝ており、左腕には、カリーナが抱きつくようにして眠っており、カリーナの顔を見た瞬間に、体の奥底からーーーーーは、とりあえず一旦置いておこう。


 目が覚めて、アテナ王から謝礼の話が出たのだが、俺が急に倒れてしまったため、俺には伝えられず、三人が聞いた状態で、謁見の間を後にした。


 そして、その謝礼内容が……まぁ、さすが王族というかなんというか………はい。


 なんと、お屋敷を貰えることになりました。


 グラファイト王国が管理している、貴族の別荘地として人気の森。日本で言ったら軽井沢的なあれである。そこにある湖のほとりの屋敷を貰えることになった。


 なんでも、没落した貴族から取り上げたものらしく、王族の別荘地として計画していたが、今回の俺のーーーいや、俺たちの働きにより、その屋敷が謝礼となったのだ。


 五条にも褒美として家が与えられたらしいが、そっちは普通の家らしい。俺もそっちが良かったとは口が裂けても言えない。


「……!智様、見えてきましたよ」


「ん……どれどれ……」


 御者台にいたエリーから声がかかったので、俺に寄りかかるようにして寝ているカリーナとシトラスを抱いたまま移動する。いやぁ、二人とも片手で抱けるサイズで良かった。本人たちに言ったら多分怒られるけど。


 よっこいせと、軽々しくーーーというか本当に軽い。これがアテナの言っていたさらなるパワーアップね。


 便利だ。


「………おぉ」


 整備されている道の先には、俺達四人で過ごすにはでっかい家がそこには建っていた。


 二階建てで、中世ヨーロッパら辺でぼんやりと想像していたようなTHE貴族の家。


 でかい。俺ん家の五倍くらいある。


「ほら、二人とも。着いたぞ」


「ん……んんっ」


「のじゃ……」


 ゆさゆさと体を揺らして起こしてみるが、まぁさっきまで馬車に揺られながら寝てたもんな。こんな揺れじゃダメだよな。シトラスは起きそうな気配がするけどーーーって。


「ご主人……」


 寝ぼけたシトラスが、首筋に顔を持っていってそのままカプリと、牙を突き立て、そのままちゅーちゅーと飲み始めた。


 久しぶりの吸血行為に、一旦全身が硬直するが、直ぐに力を抜いてされるがままに。


「………ぬ?ご、ご主人!?」


 血を飲んで覚醒したシトラスが、顔を赤くして、俺から降りた。


「………ぬぅぅ……」


「シトラス。どうして俺の事をそんな目で見つめるんだ」


 いや、何となく分かるんですけどね?俺とシトラスにはパスが繋がっていて、そこからお互いが何を考えているのか分かるが、そんなめちゃくちゃ期待してたのにー!的な目で見られても………。だってそれ、夢じゃん。


 言っておくが、俺はまだDTだ。エリーとも、シトラスとも一線は超えていない。カリーナはもうちょっと歳をとってからで……具体的にはあと六年くらい。


 いや、そりゃあ?俺だって男ですし?こんなに美人で可愛い女の子たちに迫られたらそりゃあどことは言いませぬが、反応しちゃうわけですよ……はぁ、よく耐えたなー俺。


 だって、今までは王宮のとある一室の部屋を借りていたのだ。ぶっちゃけクラスのヤツらのどれだけがメイドさんと心を通わせて、卒業したかどうかは知らん。でも多分五条は卒業してる。


 …………あれ?そういえば、うちのクラスにも女子っているよな?その場合勇者メイドさんとは………まさかの百合ップルですか?


 さて、話を戻すが、王宮の一室を借りていたのだ。そりゃまぁ、情事に耽けるのってなんかちょっと抵抗感ない?俺だけ?


 とまぁそんな理由からまだ卒業してないのだがーーーーー多分不味い。何が不味いかと言うと、俺の理性が多分持たない。


 だって、恐らく主にエリーとシトラスが俺を誘惑してくるじゃん。無理だよ?俺が風呂に入ってる時に来たら我慢できないもん。


 そりゃあ俺だって、エリー達とそういうことをしたい欲求はある。人間だもの。好きな人とは結ばれたい。誰だってそう思うだろ?


 でもですよ?少しその、雰囲気とか?その辺を考慮して欲しいなーって………だめ?


「「………………」」


 はい、どうやらダメなようです。


 二人の笑みを見て、きっと今晩襲われるんだなーと思った俺だった。

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