第31話

「……おーい……おーい?」


 ゆさゆさ、と俺の体を誰かが揺すり、意識の覚醒を促してくる。


 ……あれ?俺って何があったんだっけ……確か、カリーナにほっぺチューされたら、前にエリーとキスした時と同じような感覚がしてーーーってそうか。


 俺、また倒れたのね。でも、地面はベッドみたいにふかふかじゃねぇし、やけにさらさらしてるし、なんか知らんけど風を感じる。


「おーい……もう、起きないならキスすらからね」


「起きた!」


 何やら不審な言葉が聞こえたので、急いで上体を起こして、目を開け……………あれ?


 ………ここ、どこ?


 目を開けると、空には綺麗な青空が広がり、地面一面には、色とりどりの花が綺麗に咲いていた。


「………どこ?」


「ここは、ミゼラウスじゃないよ………まぁ広義の意味で見たらミゼラウスかもしれないけど」


 すぐ隣から声が聞こえたので、顔を動かして声の主を確認する。


 するとそこには、絶世の美女が隣で可愛らしく女の子座りで座っていた。


 亜麻色の髪を地面に着くくらいまで伸ばしており、水色の瞳、そして露出のやや高い服を着ていた。


 ………なんか凄い女神!って感じの服着てるなぁ……まさか本当に女神だったり?まぁそんなわけないか。


「初めまして、ボクの愛しの勇者様、僕の名前はアテナ。これから末永くよろしくね」


「本当に女神かよ……………」


 後、末永くよろしくってなんスか。


「うん、そうだね。女神アテナだよ。まぁボクは2代目だけど」


「2代目?」


「うん、初代アテナは旦那といつもイチャついてるよ」


 うん、とりあえずまぁ色々と突っ込みたいことは多々あるけど……今は疑問でも解消しようか。


「最初の質問に戻るけど……ここどこ?」


「ここは、ボクの心象世界だよ。キミの意識だけどをこう……釣り上げるようにしてここに呼んだんだ」


 と言って、釣竿を引くようなジェスチャーをするアテナ。ちょっと、人の意識を魚に例えないで。


「……俺の体は、ちゃんと無事だろうな?」


「うん、今はちゃんとキミの勇者メイドと、魔王ちゃんとアテナの系譜がしっかりと看病してるよ。はい、証拠」


 アテナが、ピンッ!と人差し指を弾くように俺へ向けると、目の前に何やら窓みたいなものが出てきて、映像がテレビのように流れてきた。


 ふむふむ…俺の体はきちんとベッドにーーーーうん、エリーに膝枕されて、シトラスにはのしかかられて、カリーナには抱きつかれてるわ。


「………これ、本当に看病?ちゃんとしてるのエリーだけじゃん」


「……まぁ、そこは気にしないでいいよ、うん」


 アテナが人差し指を上から下へ下ろすと、その光景が消えた。


「ボクが、君をここに呼んだ理由は、君に伝えることがあるからなんだ」


「……伝えたいこと?」


 俺が聞き返すと、アテナはこくりと頷く。その顔がヤケに真剣なので、俺もついつい姿勢が正座になってしまった。


「実はね…………」


「……………」


 ゴクリ、と生唾を飲み飲んだ。わざわざ俺を呼び出したくらいなんだ。ボクの愛しの勇者とか勇者は五条のほうじゃろがい、とか言いたいけど、一旦飲み込もう。


 さぁ……一体何を言うんだ!。


「ーーー私をお嫁さんにする権利が発生したよ!」


 発生したよ!


 ………発生したよーーー!


 発生したよー!発生したよー!発生したよー!


 ………………………。


 …………ん?


「は?」


「君がアテナの系譜の因子を取り込んだから、正式に私とイチャイチャできる権利が君には発生したんだ!やったね!大河ーーーううん、智くん!」


「……………は?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最後の部分、五条じゃなくて大河でした。主人公の苗字間違えたらダメでしょ俺………

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