第28話

 カリーナ姫護衛の任務を与えられ、四日経った。ついに、シトラスがメルトさんの後を付けさせていた使い魔からの連絡がきた。


「ご主人、3匹全部から連絡がきたのじゃ。どうやらどれも気づかれていないみたいなのじゃ」


 といい、空からしてん、少し離れた1からの視点、そして、そこそこ近めな視点の3カメ状態でのお届けである。


 ちなみに、しっかりと五条も見てます。


 さてさて……一体誰と接触するのか……お?


「あれは……」


「カリーナ姫?」


 メルトさんと、接触した黒い体に山羊頭の悪魔みたいなやつを見て、カリーナが声を上げた。


「智様、あれは魔王四天王と呼ばれる、魔王側近の中でも1番厄介とされている四天王です」


『バルバトス様、お疲れ様です』


『うむ、メルトもよくやっている』


「その名も、狡猾のバルバトス。四天王の中でも1番知力に長け、魔法を得意とする悪魔です」


「……あれが」


 魔王四天王……。しかし……。


「……あれじゃな、思ったよりも弱そうじゃな」


「うん」


 シトラスの目が血に近い赤色に変色したことにより目を発動させているのは明らか、俺も少し程度であれば、シトラスの真似ができるようになってきた。


 しかし、俺から見ても、シトラスから見ても、抱いた第一印象は弱そうだった。


 見た目だけなら超ヤバそうだが、魔力量も、バルバトスから出ているオーラも、悪くいえばそんな強敵に感じられるほど強くはない。


「……いえ、奴は常時本当の実力を隠しており、奴は自身の身体能力以下だったら自由に強さを変えられる固有魔法を持っているのです」


「なんじゃと………」


 そして、シトラスがもう一度視線をバルバトスへ向けると、じっ……とバルバトスを見てて始める。


「………なるほど、確かに、あれだったら我の目も欺ける。ご主人、あれは自身の体を根本的に変えてしまう魔法なのじゃ」


「根本的に……」


 簡単に言えば、たぬきの葉っぱを使った変化よりもかなり高度なものである。


「……カリーナの助言がなかったら危なかったのじゃ」


「……本当だな、ありがとう、カリーナ姫」


「えへへ……」


 と、感謝の気持ちに頭を撫でると、嬉しそうに目を細めた。


『計画の準備は?』


 バルバトスが話し始めたので、黙って聞くことに。


『全ては終わりました。後はバルバトス様の合図だけです』


『ふむ、そうか』


 と、バルバトスは顎(?)に手を当ててなにやら考え始めた。


『王城が1番手薄になる日はいつだ』


『そうですね……明日にはオルフェウスにはつくでしょうし、ジョセフは今は帰省中……勇者達も今は羽休み期間なので全員気が抜けているので、明後日がチャンスかと』


『なるほど、では明後日にしようか』


 ふーん……なるほどねぇ……。


「よし、報告」


「了解なのじゃ」


「了解です」


「大河」


 アテナ王の元へ移動しようとしたら、五条……と、後ろで控えているメリルさんが現れた。


「どうした、五条」


「いや、一応確認しておこうと思ってね」


 五条の役目は、クラスメイトにこの事実を伝え、戦闘の準備をさせておくこと。殺しについては勇者因子がどうにかしてくれるため、そこら辺は考えないようにする。


「お前は、戦闘の準備をしておくこと、念の為に心の準備をしておくことを伝えればいいから」


「分かった」


「後、情報源が俺の事を絶対に伝えるなよ」


「分かっーーーーえ?」


「俺よりも勇者であるお前の方が信頼感はあるだろうが」


 ということで、そこら辺は頼んだ。


「……まぁいいか。それと大河、これを」


「…ん?」


 五条からなにやら紙を受け取った。それを見ると、なにかの地図のようでそこら辺にバツ印が書かれていた。


「この王城の見取り図と、魔法陣の場所だ。是非活用してくれ」


 え……超優秀なんだけど……。


 俺は、カリーナ姫をアテナ王の元へ送った後に、シトラスと共に魔法陣の削除を行った。


 といっても、魔法陣を消すと、メルトさーーーもうメルトでいいや。メルトに気づかれるので、転送の効果だけ消しておいた。


 多分これで大丈夫……だと思う。


 ちなみに、1番でっかい魔法陣は、バルバトスを呼び出すものとシトラスが予測したので、それだけは倒すために残しておいた。

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