暗躍

「……えぇ、分かってます。準備は着実に……はい。既に50個の魔法陣を王城内に仕込んであります。準備が出来次第、いつでも」


 とある男が、闇夜に紛れて王城を移動している。顔を覆うフードで顔は見えないが、口元だけでもそいつが端正な顔立ちをしていることは簡単に予想できる。


「はい、大丈夫です。勇者たちの実力も測れました……注意すべき人間は二人ですが、それ以外は有象無象です」


 もちろん、この二人のことは勇者である亘と、シトラスを呼び出した智のことである。


「……はい……おっと、人が来ます。少し黙りますね」


 男の目の前から二人のメイドが歩いてくるが、その二人は男に気づくことなく、そのまま素通りをして行く。


「………はい、もう大丈夫です………それでバルバトス様、王城襲撃の予定はーーーっ!!」


 バサバサ、と鳥が羽ばたく音が聞こえた。


「……いえ、ただの鳥でした……それで、バルバトス様、王城襲撃、そして姫様誘拐の手筈はーーーーー」


 その男の会話を、赤色の瞳が覗いていた。

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