第25話

「…よし!今日はこれで終わりとする!」


 下へ続く階段を発見し、ジョセフさんが声を上げた。どうやら今日の訓練は終わりのようだ。


「……ふぅ、体力的には問題ないけど、精神的の方でちょっと疲れたかな……」


 潤が隣で肩をトントンっと叩きながら言う。まぁたしかに体力的には全くもって問題は無いな。


「それじゃあ帰るぞ」


 と、ジョセフさんが言うと、ポケットから何やら青い石を取り出した。


「これは、転移石と言って、今いる場所からダンジョンの外まで自動的に連れて帰ってくれる優れものだ。帰りは一瞬だぞ!」


 ジョセフさんが、転移、と言うと、俺の視界が一瞬だけ青に囚われ、開放された瞬間には、ダンジョンの入口にいた。


 ………すげぇ、実にファンタジーである。







「お帰りなさいませ、智様」


「ただいま、エリー」


 大体日本時間で言うと、5時くらいに、王から与えられている部屋へと戻ってこれた俺とシトラス。部屋のドアを開けると、エリーが待機してくれていた。


「お怪我などはございませんか?」


 と、エリーがぺたぺたと体を触ってくる。


「大丈夫、俺途中から戦闘にほぼ参加させて貰えなかったし………ちょ、エリー、くすぐったいって」


「綿密検査です。そうこれは検査……決して、私が智様が愛おしすぎで触っているのではなく、これは検ーーーーー」


「そこまでなのじゃ」


「あう……」


 シトラスがプクーと頬をふくらませながら腕を振るうと、エリーの周りに風が発生し、強制的に浮かせて離した。


「全く……ちとひっつきすぎてじゃ」


「……シトラス様が言っても説得力ありませんよ」


 おっと……俺はなんだか2人の後ろに四本腕の般若が見えるな……ついでに火花が両者の目か散ってますね…。


「……ほ、ほら、二人とも……」


 俺にはこういった経験が悲しいほどに無いので、こんな時にどういった対応をすればいいのか分からん。五条を巡るクラスメイトの女の修羅場はよく見るんだけどーーーーは!


 そうか、これは五条の真似をすればワンチャン二人は睨み合うのを辞めるかも!えっとたしか五条はーーーーー。


「……二人とも、落ち着いて」


「のじゃ!?」


「はうっ……」


 女子に効く(ただし、イケメンに限る)リーサルウェポンである頭なでなでを実行してみる。五条はよく、女子の頭を撫でて争いをたしか諌めていた気がする。


 そして、(当人比)三割増くらいのイケボをイメージして………えっと、えっと……。


「ほら、そんなに睨み合わないで、可愛い顔が台無しだよ」


 吐きそう。五条アイツすげえな。こんなキザったらしいセリフ、よくあんなイケメンスマイルで言えるな。正直、今だけはすげぇ尊敬する。


 でもあったらとりあえず1発ビンタするか(理不尽)。


「……さ、智様……」


「ご、ご主人……」


「ん?………あっ」


 少しだけ五条に向けて怨嗟を飛ばしていると、エリーとシトラスから弱々しい声が聞こえてきた。


「…そ、その……」


「そろそろ手を離してくれると……」


 その顔は羞恥とか嬉しさとかがなんか色々と混ざりあった顔をしていた。


 ………なんかごめんね?


 パッ!と二人から急いで手を離すと、二人は安心したかのような、少し残念がるような顔をしていた。


「……コホン、智様。既に夕飯の用意はしております……その、疲れているのなら、私が僭越ながら、あーんなるものをします」


「……えっと……」


 ごめん、流石にそれは恥ずかしすぎて勘弁。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

声しか知らない嫁さんと本当に付き合うが、明日で最終回となります。


もし、読んでない!と言う方がいらっしゃるのなら、是非読んでみて下さい。ただし、ブラックコーヒーを準備してからですが。


それと、初めて長文タイトルに挑戦してます。そちらの方もよろしくお願い致します。

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