第23話
ダンジョン。それは、この世界にいつからあるのか分からない神秘の建造物。
ある姿は地下に伸びる形だったり、ある姿はタワー型のダンジョンだったりと、様々な形があり、この世界では、クリアするとなんでも1つ願いが叶えられる宝玉があるとか、これは神から与えられた試練だ的な噂が囁かられている。
しかし、まだ誰もクリアしたものが居ないらしいが。
現在、俺たちがやってきたのは王都の近くに存在する『始まりの迷宮』という駆け出し冒険者が、ちょっとした訓練のためや、小遣い稼ぎができる、いわゆる、ゲームで言う所の最初の洞窟的な立ち位置にある。
なんでも70階層まで攻略済みであり、世界で一番攻略が進んでいるダンジョンである。
ここのダンジョンの主なモンスターは、エリーと勉強した通り、ゴブリン、スライム、ちょっと進むとオーク、そしてラット等のモンスターが出てきて、30階層まで行ければ駆け出しは卒業と言われている。
30階層からは……まぁまだ行かないから行った時に説明するか。
今回、俺たちがここを攻略するということなので、他の冒険者は立ち入り禁止となっており、俺たちが存分に実践しやすいようにと御触れを出しているらしく、周りに冒険者の姿は見えない。
「……冒険者は気性が荒い人が多いイメージなんだが……意外と誰もいないんだな」
と、何故か隣にいる五条が呟く。まぁその言葉にはものすごく納得するが、お前なんでわざわざ俺の隣いるんだよ。あそこでお前を見ている女子のとこ行ってやれよ。多分顔を赤くして喜ぶから。だから俺を睨むな。
「………はぁ」
「……大丈夫?智」
「大丈夫か?ご主人」
俺が大きなため息を吐くと、隣にいる潤と、手を繋いでいるシトラスから俺を心配する声が聞こえる。
いやぁ、心労は全部隣にいる勇者くんのせいなんですよ……早く戦闘始まんねぇかなぁ……そしたらコイツ前線に行ってくれる……ん?
「来るぞっ」
首筋ら辺にピリリ、と弱い電気を喰らったような感覚がすると、シトラスが警戒の声を出す。
「魔物だ!前衛組!前に出ろ!」
「それじゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい!」
「もうこっち来んなよ」
素晴らしいスピードで皆の1番前に出ていく五条。赤いマントをたなびかせ、腰から金色に輝く聖剣を抜いた。
……あれ、見た目思いっきりエク○カリバーなんだよな。
「行くぞっ!」
五条の気迫の篭った声がこちらまで聞こえる。チラッ、と人と人の間からモンスターを見ると、そこには緑色の体をした奴がいた。
「……ゴブリンか」
スライムと大体同じくらいの雑魚さとして知られているゴブリン一行計6体。他の前衛組が動く前に、五条が一太刀で全部切り伏せた。
「あっ………」
スパパパーン!とゴブリン達の首が飛び、絶命。ある人は剣を鞘から抜こうとしている段階で固まり、ある人は、腕につけたガントレット同士を合わせた状態で止まる。
「………よし五条。お前しばらく後ろな」
「……………………………」
ジョセフさんに言われ、とぼとぼとまたまた俺らのとこに戻ってくる五条。まぁ……うん、なんだ。
「……どんまい?」
お前は悪くない。弱いゴブリンが悪いんだ。
そして、あれから五条抜きで五階層まで進むと、今度は俺たち後衛組となる。
「……なぁ五条」
「……なんだ?」
「ゴブリン達を殺した時さ……どう思った」
敢えて、倒したでは無く、殺したと聞く。
「そう、だな………」
五条は顎に手を当てて考える。潤もそれを見つめていた。
「……意外と、忌避感はなかった。ゴブリン達を前にした時ーーーーアイツらの殺気を見に受けた時、心の底からこう思ったよ」
後衛組が魔法を飛ばし、スライム達をもやし尽くしている所に目を向けーーー五条は、今までで見たことがないほどに、険しい目をした。
「ーーーー殺らないと殺られるってね」
「………そうか」
「あぁ。俺たちは戦争のせの字も知らないガキだけど、だからって、しり込みしている場合じゃないさ。メルルから勇者因子について話を聞いた時から、覚悟は決めたーーーー俺は、殺しを躊躇わない。躊躇っている間に、メルルや、皆が死ぬ場面なら、俺は迷いなく、この剣を抜く」
鞘を撫でながら、覚悟の決まった目で俺たちを見る。
「……ふむ、こやつなら大丈夫そうじゃな」
「……魔王のお墨付きならありがたいね」
「ばかもの。元を付けろ元を」
ペチン!と五条の手を叩くシトラス。絶対痛くないのに「いててっ」と演技するあたり、案外ノリがいいのだろう。
「よし!だいぶ良くなってきたな、次の後衛グループ!準備をしておけ!」
と、ジョセフさんから声がかかった。
「うし、行くぞシトラス。確かめスライムやゴブリンはデコピンの衝撃波で粉砕できるんだよな?」
「うむ、ご主人の今の力ならそれくらいお茶の子さいさいなのじゃ!」
結果、本当に爆散しました。
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