第22話
この世界に来て、多分二週間経った。
俺もシトラスのおかげでそれなりに魔法が使えるようになった。今なら中級魔法くらいだったら全属性いけるよ。すごいでしょ、褒めて。
って言ったらめちゃくちゃ潤に褒められて恥ずかしくなったからやっぱやめて。俺って褒められ慣れてないの。
そして、最近では五条の進歩が凄い。前まではジョセフさん相手に歯が立たなかったのに、ある時を境に急に何倍もの素早い動きになり、ジョセフさんを圧倒しだした。
金髪メイドのメルルさんが、応援に来ており、「勇者様さすがです!すごいです!」って大声が聞こえて、五条も嬉しそうに頬を若干赤くしていたことによりーーーーー
(((((あ、こいつら出来てるわ)))))
と、まだメイドさんといい雰囲気になってない男子プラス、勇者メイドがいない男子は五条を睨み、女子は悲鳴を上げていた。カオスカオス。
なるほどなぁ……イケメンでも恋愛関連でニヤニヤしてるとちょっとキモイな。後でシトラスに癒されよう。
「はい、それでは皆さん、集合してください」
パンっ!と手を叩いた視線を集中させるメルトさん。ジョセフさんの方でも同じく前衛職が集合していた。
「皆さん、明日からは実践訓練に入ります」
実践、と聞いて、クラスがざわめく。たぶん向こうでも似たようなことを話しているだろう。
「と言っても、一般人でも簡単に倒せるような魔物しか出てこないので安心してください。魔法が使えるあなた達なら瞬殺です」
と聞いて、明らかに安堵の空気が流れ始めた。
「明日の朝頃にダンジョンへと出発します。今日はもう訓練は終わりですので、ゆっくり休んでください」
と言われ、各々生徒がバラける。
……一応、魔物とか振り返っとくか。と、言うことなので早速エリーを呼んでーーーー
「智!」
「大河」
「ん?」
エリーを呼ぼうと、手をパンパンと叩く前の状態で静止する俺。そこに潤と五条がやってきた。
「おう、どうした二人とも」
手を下ろして二人に対応する。メルルさんが向こうからやってきた。
「いや、俺はこれから大河がどうするかを聞きに来たんだけど……」
「僕も。智って用心深いから、こういう大事な日の手前は何か準備するからね」
………あれ?もしかして俺って潤だけじゃなくて五条にも行動パターン見切られてるの?
「……いや、まぁ俺はこれから復習がてら魔物の情報集めに図書館に行く予定だけど……」
「図書館……なるほど、そういえば俺はまだ魔物の情報集めなんてしてなかったな……」
「それはしょうがないだろ。実際自由時間なんて夜くらいしかないし」
しかもめちゃくちゃ疲れてるからな。そんな事に思考を回さないで当たり前当たり前。
「なるほどな………さすが大河だな」
「………」
俺さ、時々思うけど、こいつからの謎の信頼の厚さなんなの?俺とお前の中って毎週お前にミステリー小説紹介して貰うくらいしか接点ないよな?
「……まぁいいや」
でも、頼られるのは悪くない。
「…… エリー」
「はい」
「うわっ!」
「キャッ!」
「いつの間に!」
スっ、と俺の横に現れるエリー。俺を除く全員が驚いた。
「図書館に行くぞ。明日ようやくダンジョンに行くらしいから、一緒に勉強しよう」
「はい、智様の思うがままに」
「なるほど、ゴブリンの見た目はゲームと同じだな……」
「……ゲーム、ですか?」
「わ、すごい……ドラゴンだ!本当にいるんだぁ……会いたいなぁ」
上二人の会話は既視感があるな。まぁ俺とエリーなんだけどな。
「こいつは、今のご主人なら、初級で瞬殺、こいつも瞬殺、こいつも瞬殺で………」
シトラスは、俺と魔物の実力を比べて、俺が自身を持てるように瞬殺できるやつ、そうでないやつの区別をしてくれている。ほんと、魔王様様である。シトラスのいた世界にも同じやつがいて良かった。
「それで、ですね、このラットというネズミ型の魔物ですが……」
・ラット
体長約50センチのネズミ。素早いが、防御力は無いので、カウンターで倒すことをおすすめする。
………なんでこいつだけ絵がのってないの?前のページのゴブリンはちゃんも載ってたけど。
「……このネズミ。様々な種類がおり、ネズミ型の魔物は全てラット、ということになっています。ここに書いてあるのは基本的なことだけですので、後でラット図鑑を読むことをおすすめします」
「……ラット図鑑とかあるのか?」
「はい、中でも一番強いラットは、身長が普通の人間くらいあり、しかも筋肉ムキムキで、冒険者と筋肉の張合いをすることで有名です」
「ほんとになにやってんの?そもそも冒険者の方も付き合うなよ」
「そのおかげで、そのラットとは何やら友好関係を築いているので、基本人間を見ても襲わないらしいです」
「さすが異世界……もうなんでもありだな」
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