第14話

「さて智様?何か申し開きとかありませんでしょうか?」


 な、なんかやばい!!エリーの右手になんか風の塊みたいなものが集まってる気がする!魔力を感じ取れるようになったのか、シトラスの半分の力が埋まっているかどうかは知らんけどなんか凄いエリーの右手に力の塊みたいなのが集結しているのが分かる!


「ま、まて!エリー!これはエベレストよりも……そんなに高くないな……えと、マリアナ海溝よりも………あまり深くないな……とにかく理由が!」


「ーーーですか」


「……へ?」


「何故ですか!智様!」


 クワッ!と大声を出すエリー。右手がボン!と何か爆発した。


「何故ですか!智様!どうして私にもそれをして下さらないのですか!」


「………………へ?」


 なんて?


「わ、私も!智様に抱きしめられたり、膝上に乗ってお腹さすられたり頭撫でられたりしたいです!」


「………のじゃ?」


 俺とシトラスの頭にはてなマークが浮び上がる。


 ……え?それそんなにしたい?


「……エリー。したいの?」


「当然です、だって私智様の専属メイドですから」


「理由になってないのじゃ………」


 ボソッと突っ込むシトラス。俺もそう思った。


「という事でどうかシトラス様、そこをどいてくださいませんか?」


 わざわざシトラスに跪いてじーーーっと目を合わせるエリー。その眼光はものすごく鋭い。


「……うぅ、父様をたまに見る母様の目とおなじなのじゃ……この目に我は弱いのじゃ……」


 と、渋々と俺がシトラスに回している手を解いてから膝上から降りるシトラス。


「……えっと……どうぞ?」


 その後の展開が分からなくなった俺はとりあえず、両手を広げてエリーを迎え入れることに。


「……し、失礼します…」


 顔を赤らめるエリーはそのまま真正面から……っておいおいおい!


 ギュ、と俺の背中に腕を回し、そのまましっかりとホールドするエリー。


 おいおい……これって所謂対面座位じゃん……エリーの柔らかい体とか髪のいい匂いとかでなんか頭物凄くバグりそう……。


「んっ……こ、これは……癖になります」


 そう言って更に腕に力を入れて密着してくるエリー。胸とか足とかが更に俺にくっついてきてヤバい……。


 ドクン!


 体の中にある勇者因子が暴れ出す。本能とは関係なしに目の前にいるエリーのことを自分のものにしたい、めちゃくちゃにしたいという願望が暴れ、俺の理性という器から漏れ出そうになる。


「さ、智様……」


 俺の肩に頭を預けていたエリーが少し体を離して俺の顔を見る。エリーの目はとろんとしており、顔も異常な程に赤い。


「エリー……」


 体が勝手に動く。エリーの顎に左手を当て、自然とエリーの口に顔が吸い込まれーーーーー


「ダメなのじゃぁぁぁ!!」


「ヘブっ!?」


 ーーーーる瞬間に、俺の顔が無理やり横に逸らされる。何事かと見れば、シトラスが真っ赤な顔で、少々涙目になりながら俺の頬を押していた。


「ダメなのじゃ!ご主人は我のなのじゃ!エリー!そこを退くのじゃ!」


「キャッ!」


 シトラスはエリーを魔法か何かで俺から剥がしてベッドの上へ置いた後に、先程エリーがしてきたように俺の膝上へと座るシトラス。胸に顔をグリグリと押し付けて、まるで自分のものだ!と言っているように俺の膝上を占領した。


 ……しかし、助かった。また勇者因子に流される所だった。前回は俺が全力の理性を持って止めたが、シトラスがいなかったらと思うと、俺のファーストキッスはエリーとなる所だった。


 いや、別に嫌ではないんですけど(ここ重要)。


 ほら、やっぱりムードとか大事じゃないですか。さっきはムードはあったと思うけどさ、ほら、やっぱり勇者因子に流されるなんてダメだよ、うん。


 しかし………。


「……なぁシトラス。さっき『ご主人は我の~!』とか言ってたけどあの意味って……?」


 シトラスの頭を撫でながら先程ボソッとなんかさりげなく言われた言葉の意味をシトラスへ聞いてみる。


「……………………のじゃ!?」


 ポク、ポク、ポク、チーンという効果音がつきそうなほどに十分な間と顔を一気に赤くさせた。


「べ、べべ別に深い意味はないのじゃ!ほれ、そ、その!ご主人には我の半分の力が埋まっておるし!」


「………あー」


 聞いて納得。そうだよな。俺の中に魔王の力半分埋まってるもんな。シトラスの力が俺の中にあるならそうだよな。うん。


 ……いや、別に期待してたわけじゃねぇし?ちょっと俺のことが好きだからそういったのかなーとか少し思ったけど、そもそも、今日出会った中でそんな好意持たれるほどイケメンでは無いって俺ちゃんと自分のこと評価出来てるし?


 ん?潤はノーカン。あいつ女顔でイケメンの基準は下がってるから。フツメンでもあいつはイケメンって言うぞ。


 アワアワと今なお慌てているシトラスの頭をヨシヨシと撫でる。うん、やっぱりなんか安心感凄いな。


「………コホン、その、智様、先程はそのまま……」


「あー……うん、俺も恥ずかしいからその……言わないでくれると助かる」


「……ありがとうございます」


「ガルルるる………」


 シトラスが顔だけエリーに向けて思いっきり威嚇する。


「……智様。その、言い忘れていたことがあるのですが………」


「……言い忘れていたこと?」


「はい。今日の夜ご飯の事なんですがーーー今日は勇者様方歓迎会ということで、大広間であるのですが…………」


 ……歓迎会?

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