第11話

「……はい、はい。そこを真っ直ぐに書いて……はい。中々筋がよろしいですよ智くん」


「くっ………」


 世界樹の杖を地面に突き刺しながら大体大きさが1m程度の大きさの魔法陣を書いているのだが……これがなかなか神経使うし、地面土だからそこそこの力入れないと魔法陣書けないし。


 まさか魔法陣を地面に直で書き入れるとは思わなかった。


 世界樹の杖地面にプス。そしてズルズルと土を左右に盛り上げさせながら書いていく。


「はい……そこでストップ。これが全ての魔法陣の基礎となるデュアルデルタという形になります」


「ふぅ……」


 額に滲む汗をローブの袖で拭う。地面に描かれたのは2重の円の内側に三角形が上下逆にクロスしているよく見る形のやつ。


 メルトさんが俺が図書館から借りてきた本と、地面に書かれた魔法陣を忙しなく視線を動かして何か間違いがないかを確認していき、ウンウン頷くと、魔法陣に近づき、指を触れさせた。


 メルトさんの指がぽわぁっと光ると地面に書かれた魔法陣が紫色に輝き始めた。


「……おぉ!」


「……はい、ちゃんと魔力を流したら魔法陣が起動しました。きとんとできていますよ智くん」


 自分で描いた魔法陣が起動したことに何処と無く感動を感じる。


「……まぁ慣れればこのように一瞬で魔法陣は出来ますけどね」


 パチン!とメルトさんが指を鳴らすと、俺が描いた魔法陣の横に同じような魔法陣ができあがった。


「えっ……」


「頑張りましょうね智くん。目指すはまず魔力を感じることです。失敗しても自分のがあるので安心して失敗してください」


 そこで落として上げます……?







「おう智!俺もいるからな!安心して失敗してもいいぜ!」


「あの………失敗を前提にいるのやめて貰えます?」


 メルトさんが応援としてちょうど前衛系の天職持ちのクラスメートを蹴散らして休憩していたジョセフさんを呼んだ。なんでも俺がスケルトンを呼ぶのに失敗して俺の制御下を離れた時の対策だそうだ。


「僕もいますから、安心して失敗しましょう!」


「……………………」


 もう俺何も突っ込まない。


 講師二人に囲まれている俺をクラスメートが興味津々な目でこちらを見る。おい見るなよ。なんか緊張するだろ。


「ふぅ……」


 とは言ったものの………これどうやってスケルトン召喚すんの?俺詠唱とか知らないんだけど。


「あ、すいません。スケルトンを呼ぶ詠唱を教えるのを忘れてました」


 ちょっとメルトさん?


 慌ててこちらへ駆け寄り、詠唱の言葉を教えてくれるメルトさん。なるほどなるほど?『目覚めよ亡霊達。我が呼び声に応え、その姿を現したまえ』ね。


 魔法陣の前に、世界樹の杖を横に持ってから魔法陣へ意識を集中させる。


 すると、体の中で何かが蠢いたような感じがした。なるほど、これが魔力か?


 確証はないが、体の中からその何かが外へ放出しているような気がする。なんか行ける気がする!


「目覚めよ亡霊達ーーーーー」


 魔法陣が一際強く輝き始めた。


「我が呼び声に応え、その姿を現したまえ!!」


 ぴかー!!とあの時教室に現れた魔法陣に負けず劣らずの光を放ち始める魔法陣。


「ふむ、これは成功の予感ですね」


「ほう、俺の出番は必要なさそうだな」


 メルトさんとジョセフさんがそう呟くのが聞こえて、俺は成功を確信した。


 さぁいでよ!スケルトン軍団!


 詠唱が終わったので後はこの魔力を魔法陣へ注ぎ込むように意識を向けるだけ。魔力を感じたら操作するのは意外とかんたーーーーーー


「ーーーーっ!?」


 ドクン!と心臓が急に強く振動し、痛みを感じた。


 何かが脳に直接手でぐちゃぐちゃに掻き回されたかのような感覚に吐き気を催し、倒れそうになったが、俺の体を何かが掴み、強制的に支える。


 な、なんだ!?一体何がおきーーー!?


「ーーーいでよ!」


 口が勝手に言葉を紡ぎ始める。メルトさん達を見ると、何も反応はしていない。


 これは………俺の異常に気づいていない!?


「死の世界から来たりし我の眷属よ!」


 スラスラ、とまるで自分の体が操られているような感覚に気分は気持ち悪くなる。


「我の名に応え、今、無垢なる姿を表したまえ!」


 ぐるぐるぐると激しく地面に描かれた魔法陣が激しく回転を初め、次第にそれが宙に浮かんだ。


「……成功です。すいませんねジョセフ。あなたは必要なかったようだ」


「いや、勇者が怪我をしないかどうかを見るのも仕事だからな、メルトも気にすんなよ」


 詠唱が終わると、フッ、と俺の体にまとわりついていた何かが離れ、俺の体は崩れ落ちる。


「くっ………」


 何とか片膝立ちで体勢を保ち、倒れることは阻止した。そして次の瞬間、俺の頭が何かに撫でられーーーーー


『ごめんね、そしてありがとう』


 という声が聞こえた気がした。


 ………まぁいい。不思議な感覚にはなったものの、結局は成功したのだろう?


 さぁこい!スケルトン軍団達!


 宙に浮いた魔法陣がグルグル回りながら下へ下がっていく。


 そこから見えるのは綺麗な銀髪に、赤色に輝く綺麗な瞳、そして何やらゴスロリチックな服を着た……………。


 服を着た………ん?


「……ふむ、誰じゃ?我の眠りを妨げる奴はーーーーと言うより吾は死んだはずなのじゃが……何故我は復活しておる?」


 ………あれ?スケルトンじゃなくね?

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